日本歯科評論5月号
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木きノの本もと喜よし史ふみ大阪大学大学院歯学研究科臨床教授医療法人豊永会 きのもと歯科〒564-0072 大阪府吹田市出口町28-1 ラガール豊津1F 前回は,診断を確定して根管に器具を挿入するいわゆる根管治療を始める前に必ず確認すべきこととして,う■の除去を解説した.今回はその後に必要となる治療部位の隔離(isolation)の■つとして「隔壁」について解説する(コラム1). 隔壁はラバーダム防湿の封鎖性や仮封の精度を向上させたり,根管充塡後の支台築造の一部となり修復にも影響する重要な処置である.以前は矯正用バンドやカッパーバンドとセメントによる隔壁の作製が行われていた(図1)が,最近は歯質への接着性能の向上と操作性に優れ強度も増したフロアブルレジンの普及により,コンポジットレジンが使用されることが多い.日本歯科評論(通刊第967号) 67▶コラム₁:隔壁の定義 日本の『歯内療法学専門用語集』(2013年版)では,「隔壁(matrix):歯内療法を施す根管内と細菌が常に存在する口腔を隔離するための壁.歯質の崩壊が大きい場合や,歯質の崩壊が一部歯肉縁下に及んでいる場合,根管内の無菌化を確保するために歯の周囲に壁を作ることによって,ラバーダム防湿を行うことが可能となり,唾液や薬液の漏洩を防止することができる.通常コンポジットレジンなどが使用される」と定義されている.American Association of EndodontistsのGlossary(2020年版)には,“dental dam(rubber dam)”はあるが,“matrix”も“isolation”も見当たらない(コラム₃参照).隔壁とは──隔壁3.感染制御

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