日本歯科評論4月号
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甲こう田だ和かず行ゆき甲田歯科医院〒105-0004 東京都港区新橋6-12-5 TRCビル1F日本歯科評論(通刊第966号) 89 筆者は,自家歯牙移植症例の経過観察から得られた知識により,その応用と可能性を検討してきた.本項では,欠損歯列や咬合支持も考えたアドバンス的な応用編として,比較的近年に行った歯科用CBCTを活用した■症例を紹介したい. これまでの自家歯牙移植における術前診査では,デンタル・パノラマエックス線写真と歯列模型を用いて,ドナーサイト(移植歯)およびレシピエントサイト(移植床)の計測を行っていた.それゆえ,移植歯の歯根形態や歯根数およびレシピエントサイトとのギャップは抜歯するまで不明確であり,把握できていなかった.それが原因で手術時間が長引いたり,途中で断念せざるを得ない場合が出てくることも考えられた.しかし,CBCTを活用した診断によって術式の簡略化を図ることができれば,適応症が広がり,さらに成功率も向上するものと思われる. 自家歯牙移植がインプラントに比較して普及しない原因は,二次元的な情報しか術前に把握することができず,また慎重な抜歯技術を要する術式の複雑性および困難性といった,規格化されていない点にあると考える.また,そのことが歯根膜という最も重要な因子へのダメージに直結する可能性もある.もちろん,術中においては臨機応変な対処が必要であり,CBCTで得られる像がすべてを表現しているわけではないが,これらの情報を活用することで,自家歯牙移植を治療方法の■つとして見直すとともに,処置方針の引き出しを増やす必要性があると感じている.Ⅶ.CTを活用した最近の症例から長期経過症例から考える自家歯牙移植の要点  ――自家歯牙移植を成功に導くポイント③(完)

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