日本歯科評論4月号
4/9

関せき口ぐち寛ひろ人と日本歯科評論(通刊第966号) 53ひろ湘南辻堂歯科〒251-0043 神奈川県藤沢市辻堂元町6-20-1 湘南T-SITE3号館2階 失活歯の歯冠補綴において,良好な予後が得られるかどうかはフェルールの獲得にかかっている■,■).しかし,日常臨床で遭遇する再根管治療後の多くの症例には十分な残存歯質が存在せず,支台築造形成の段階ではフェルールの獲得が困難な場合が多い.その場合,矯正的挺出(図₁)か,歯冠長延長術(図₂)を行い,フェルールを獲得することがセオリーである.もしそれらを行えない,あるいは行わないのであれば,原則的には抜歯(図₃)の適応となる. しかし,フェルールの獲得が難しいからといって抜歯に同意する患者は少なく,妥協的な治療が行われている事実も否めない.フェルールが獲得できないまま,支台築造を行う治療を選択した場合にはクラウン装着後のトラブルが高頻度に発生する.鋳造ポスト&コアの場合は脱離か垂直性歯根破折が,レジンコアでは脱離か水平破折が,ファイバーポストを併用する場合は加えて垂直性歯根破折がそれぞれ発生するリスクが高まると考えられている■). トラブルの中でも,歯根破折は失活歯の抜歯となる原因の大部分を占め,補綴装置脱離よりも深刻な結果をもたらしてしまう.そこで,フェルール効果を発現する十分な歯質が確保できない残根に対する新たなアプローチとして,歯根象牙質と近似した弾性率を有するコンポジットレジンですべてを修復する「ダイレクトボンディングによるクラウン修復」を提案したいと考えている. 残根状態などでフェルール効果を発現する十分な歯質が確保できない状況下で,“ダイレクトボンディングによるクラウン修復”(以下,ダイレクトクラウン修復)を行う場合,より良い接着システムの選択と,その接着システムの性能を引き出すより良い接着技法が重要である. 接着システムに関しては,■ステップセルフエッチングシステム(クリアフィル メガボンド■/クラレノリタケデンタル)を使用している.そして,セルフエッチングシステムの接着をさらに引き出すフェルール効果の得られない状況を打開するダイレクトボンディングによるクラウン修復―マイクロスコープを応用した接着技法

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る