日本歯科評論3月号
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木きノの本もと喜よし史ふみ 根管治療の目的は,根管内の感染源を除去して,その後の感染を防止し,歯を長期にわたって保存することである.そして,歯科医師による根管の形成や洗浄,充塡などの根管治療は,根尖周囲に生じる根尖病変を直接治すわけではなく,患者の生体反応によって治癒が起きる環境を作っているのである.これは根尖病変の原因が根管を通じての感染であることを証明した,1965年のKakehashiらの報告(図₁)■)が前提となっている.したがって,歯内療法において診断から処置におけるすべての項目が大切であることは間違いないが,根管の感染の原因や状況,対処法の理解は特に重要大阪大学大学院臨床教授医療法人豊永会 きのもと歯科〒564-0072 大阪府吹田市出口町28-1 ラガール豊津1F図₁ 歯内療法の治療の根本となるKakehashiらの報告■).ラットの上顎第一大臼歯の髄腔にラウンドバーで穿通してそのまま放置し,無菌の餌と通常の餌でそれぞれ飼育して,■週間ごとに病理組織を作製して比較した研究である.無菌の状態では歯髄の切断面にデンティンブリッジが形成され歯髄は正常であったが,通常の餌の場合は細菌感染が生じて歯髄は壊死し根尖部に膿瘍が形成された.これにより,露髄による歯髄腔の開放あるいは機械的刺激が歯髄の壊死や根尖部の病変の原因ではなく,歯髄腔に細菌が侵入し,それに対する生体の反応として根尖病変が生じることが示された.無菌ラット21匹通常ラット15匹上顎臼歯を露髄そのまま放置病理組織標本作製結  果日本歯科評論(通刊第965号) 81感染制御の重要性2.感染制御──う蝕除去

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