日本歯科評論3月号
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景かげ山やま正まさ登と 従来,う■についての治療のフローチャートは必要なかった.なぜなら,数十年前むし歯の洪水といわれた時代は,う■の進行が速く重症化し,う窩になってから発見されることが多く,さらなる進行を防ぐため,すみやかに切削介入し修復しなければならず,う■治療はう窩の充塡が主体だったことによる. 近年,フッ化物配合歯磨剤の普及などにより,う■の進行は遅くなり,白斑などの初期う■病変が注目されるようになってきた.初期う■を含めう■は,一方的に進行するのではなく,進行の停止や回復する場合があることがわかってきたからである.しかし,初期う■を放置すれば,う窩に進行する可能性が高いので,う■を進行させないためには,う■の重症化予防が不可欠である. う■の重症化予防に取り組むためには,まずう■病変,特に初期う■病変とは,どのようなものか知ることが重要である.次に,その病変が進行するかどうか,活動性を評価したうえで対策を立てる必要がある. したがって,う■への対応は,う窩だけではなく,初期う■からう窩に至るプロセスを考慮しなければならない.そのため,どのように検査を行い,診断を下し,その診断に基づいて治療するのか,根拠を踏まえたうえで,う■の検査に基づく診断と治療のフローチャートを作成する必要がある. そこで本連載では,まずはじめに歯冠う■の検査に基づく診断と治療のフローチャート作成するうえで必要な根拠を整理する.次に,症例を交えてフローチャートの活用法を説明する. 本稿では,歯冠う■に関するフローチャート導入の背景について初期う■に注目して述べる. う■とは,歯面上のプラークバイオフィルムの中で起こる動的なプロセス(すなわち,脱灰と再石灰化)で,歯の基質と周囲のプラークバイオフィルムとの間の平衡関係が妨げられた状態で時間が経過景山歯科医院〒164-0011 東京都中野区中央 2-59-11日本歯科評論(通刊第965号) 25歯冠う蝕の検査に基づく診断と治療のフローチャート――フローチャート作成の根拠と実際の活用法1.フローチャート導入の背景――初期う蝕に注目して

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