日本歯科評論3月号
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宮みや崎ざき真まさ至し日本大学歯学部 保存学教室修復学講座 教授〒101-8310 東京都千代田区神田駿河台1-8-1310 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.3(2023-3) 色調適合性を考えるうえで,色の三属性である「色相」「彩度」および「明度」を理解することが重要となる.色の三属性の相互関係は,色立体として三次元的に表され,それぞれの関係性が理解できる(図❶).色相は,色を特徴づける色みのことであり,彩度は色みの強さ,あるいは鮮やかさの度合いである.そして,明度は色の明るさの度合いであり,光の反射率に関係するものである.この色立体の中で,歯質の色調の範囲はきわめて限られた領域に存在し,特に人間の視覚では違いを感じにくい黄色みを帯びた領域にあたる₁).したがって,シェードテイキングを行う際には,歯の有している色相や彩度よりも,明度を的確に把握することが基本となる.目を細めて網膜に到達する光の量を減少させ,中心窩に密集している色相を感知する錐体への光の需要量を低下させるとともに,長時間見つめることを避けることで負の残像が生じないようにする. シェードテイキングにあたって,生理学的および心理学的な側面は重要な因子となる.特に,彩度と色相は,光強度の影響を受けやすいためにその違いを明確に判断することは困難とされている.逆に,コンポジットレジンのシェードにおいても,明度を重要視することで,ペーストの色調にユニバーサル性を付与することが可能となる.すなわち,光の拡散性とともに光線透過性をコントロールすることで明度を重要視したレジンペーストが市販されている. 歯頸部充塡の症例では,象牙質の色調(明度)に合わせたレジンペーストを用いる必要がある.充塡操作に先立って,歯肉圧排を行った際のミラー像である(図❷-a).接着操作を行った後に,乳臼歯にはクリアフィルマジェスティ ESフロー UniversalのUを,小臼歯にはUOPを塡塞した(図❷-b).明度を考慮することで,色調適合性に富んだ修復操作が可能となる.CR修復におけるコンテンポラリーアート──審美性に配慮した臨床的アプローチの実際修復物と歯質との色調適合性における色の三属性の理解明度の重要性3.形態,明度および光沢感の調和

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