日本歯科評論2月号
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甲こう田だ和かず行ゆき 超高齢社会を迎え,われわれは片側遊離端欠損が両側性欠損へ移行する時期を少しでも遅延させ,「一口腔の,より長期的な歯列保全を図る」という欠損補綴の目標の■つを常に忘れずに対応しなければならない.いかに天然歯を保護し,喪失しかけた歯を保全し,欠損の流れをくい止めるか,ということが重要であるが,日々の臨床ではすべてが異なる症例で,個別対応が必要となる.個体差,個人差のある患者一人一人の求めに応じて,あらゆることに対応していかなければならない. 欠損歯列の領域においては力の問題が大きく関与し,長期にわたる歯列保全を図ることは容易ではない.歯科医療の最大の目標は歯と歯列の保存であることに異論を挾む余地はない.欠損歯列の多くは咬合崩壊を伴い,欠損のない歯列と比べてきわめて治療の難度が高くなる.欠損歯列をどう治療するかということよりも重要なのは,欠損をつくらない,拡大させないことである.すなわち,咬合崩壊を起こすような多数歯欠損症例をつくらない予防的対応であり,それが臨床のキーポイントと考えている.特に欠損歯列の起点となる少数歯欠損への対応として,また究極の保存治療の一手段として,歯根膜の最も有効的な活用法である自家歯牙移植が欠損の拡大防止へ有効であることを筆者は自らの臨床において実感してきた. 一般に臨床では,適正な診査・診断を行い,欠損が生じた原因を同定し,その原因を除去する治療を行う.原因を除去した後には,通常,欠損部への補綴が必要になる.甲田歯科医院〒105-0004 東京都港区新橋6-12-5 TRCビル1F26 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.2(2023-2)Ⅰ.はじめに長期経過症例から考える自家歯牙移植の要点  ――自家歯牙移植を成功に導くポイント①

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