日本歯科評論2023年1月号
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高たか野の遼りょう平へい針はない.そこで筆者は,反対咬合の早期治療のリスク評価を考案し,治療の判断に活用している.本稿ではその評価法について紹介し,実際に評価を行った骨格性下顎前突症例を供覧する.また,急速上顎拡大装置(Rapid Maxillary Expansion,以下RMEと略す)と上顎前方牽引装置(Maxillary Protractive Appliance,以下MPAと略す)を用いた治療についても文献を引用し考察を加える. 最初に,本稿での用語の定義を解説する.反対咬合は「上下顎の歯列が部分的もしくは全体的に逆被蓋を呈している状態」■)とし,下顎前突は「反対咬合で,前歯■歯以上の逆被蓋を呈する上下顎歯列弓関係の不正」■)とする. 成長期の反対咬合症例の診断を行う際には, 機能性, 歯性, 骨格性の鑑別を行うが, 典型的な機能性下顎前突は少なく, 骨格性下顎前突との合併症が大医療法人社団 高野歯科医院〒953-0041 新潟県新潟市西蒲区巻甲1404-170 THE NIPPON Dental Review Vol.83 No.1(2023-1) かかりつけ歯科医である一般歯科医は,小児患者の不正咬合を早期に発見することができ,長く関わることができるという利点がある.通い慣れた歯科医院で不正咬合にも対応してもらいたいという患者側の要望は年々高まってきているように感じる.北總■)は,一般歯科医が行う矯正治療で「やっていいこと」は,患者の健康咬合育成を積極的に行うこととし, 「やってはいけないこと」は,十分な治療計画を立案せず, 偶発症への配慮なく無謀な治療を行うこととしている.小児の健やかな成長に貢献するためには,治療のゴール設定が可能な症例に介入すべきであり,症例の難易度評価を含めた診断が重要である. しかしながら,成長発育を予測することは難しく,反対咬合の早期治療は結果が出るまで約10年間に及ぶ長い道のりになる.一般歯科医が成長期の反対咬合患者にどのように関わるべきかについて明確な指連載 ■ 早期反対咬合への対応─その意義と注意点③Ⅰ 一般歯科医と反対咬合の早期治療Ⅱ 成長期の反対咬合症例のリスク評価    急速上顎拡大装置+上顎前方牽引装置を用いた切歯交換期からの反対咬合治療

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