日本歯科評論2023年1月号
5/9

佐さ々さ木き 匡まさ理のり公立学校共済組合 九州中央病院歯科口腔外科・インプラントセンター〒815-8588 福岡市南区塩原3-23-1 近年,欠損補綴においてインプラント治療は審美的にも機能的にも優れた治療法として広く認知され,多くの施設で行われている. カリエス,歯周病,過重負担などで臼歯を喪失してバーティカルサポートが失われた場合,咬合が低位となり,上顎前歯部のフレアアウトを生じることで前歯部のアンテリアガイダンスが失われた結果,咬合崩壊を招き,機能的にも審美的にも問題となる.咬合崩壊を起こさないためには,義歯,ブリッジ,インプラント治療などの欠損補綴によるバーティカルサポートの早期回復が重要である. 上顎臼歯部にインプラント治療を行う場合,上顎洞の存在が問題となり,埋入予定部位の既存骨がどれくらい残っているかによって治療法が異なる.歯槽骨の骨吸収が著しい場合の治療法としては,①傾斜埋入,②ザイゴマインプラント,③ショートインプラント,④上顎洞底挙上術が行われている.各々メリット・デメリットがあるが,トップダウントリートメントを考えた場合,理想的な位置に十分な長さのインプラントを埋入するためには,上顎洞底挙上術が最も優れた方法である. 上顎洞底挙上術は,BoyneとJames■)が報告した上顎洞側壁に骨窓を設けて洞粘膜挙上を行うラテラルアプローチと,Summers■)が報告した歯槽頂よりオステオトームを用いて洞底部骨を槌打して洞粘膜挙上を行うクレスタルアプローチの■つのアプローチ法があり,これまで術式の改良や新しい治療機器の開発が行われ,現在に至っている.また,インプラント埋入時期によって,上顎洞底の挙上と同時に埋入を行う同時埋入法と治癒を待って埋入を行う待時埋入法に分けられる. 上顎洞底挙上術をより安全に行うことを考えた場合,洞粘膜の状態を明視下に確認しながら剝離挙上ができ,同時埋入も待時埋入のどちらも対応可能であるラテラルアプローチがベストな選択である.しかしながら,手術侵襲が大きくなること,術者の技量や経験が必要であることから,患者目線,術者目日本歯科評論(通刊第963号) 45From a clinical perspectiveインプラント治療における上顎洞底挙上術の術式選択のメルクマール――より安全で低侵襲な治療を行うために

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る