日本歯科評論12月号
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ひ樋口琢善組織を取り出し観察することは難しいが,以前は行われていたこともあるので,文献的な考察から考えてみた.いずれもケースレポートであるが,人の組織切片での考察となるので参考になることは多いと考えている. Pasquinelli■)は,歯肉退縮している口腔内に1.5mm以上の上皮付きの遊離歯肉移植術を行い,11カ月後に周囲の組織ごと取り出し組織を観察した結果,唇側に骨が回復していたと報告している.移植片の滑落や血管新生などの治癒の過程が上皮のダウングロースを抑えることができたのではないかと推測している.Cortelliniら■)は,退縮した歯肉にGTRメンブレンを用い,■週間でメンブレンを除去,■カ月後に組織ごと取り出し観察したところ,唇側に骨が回復したと報告している.McGuireら■)は,人工的に作った骨欠損に対して根面被覆を行い,■カ月で周囲の組織ごと取り出して観察した結果,CTG+CAFでは歯周組織の再生は認められなかったが,角化歯肉は獲得できた.また,CAF+EMDでは歯周組織の再生を認めたと報告している.Rasperiniら■)は,上皮下結合組織移植+Emdogain 本稿では,隣接部を含む唇頰側の骨が吸収し歯肉の退縮を認める,いわゆる根面露出を伴う骨欠損に対して,どのようにアプローチを行っているのかを提示する.このような症例では,再生の場の確保や血餅の維持が困難であるため,垂直的な骨の回復には戦略が必要となる.軟組織の回復だけであっても,清掃性や審美性の回復はある程度は得られるため,基本的には根面被覆の手法とそれに付随した対応となる. 根面被覆は以前から行われている手法であり,その治癒において歯周ポケットが形成されるのではないのかと議論されることもあるが,術後はプローブが歯周ポケットの中に入っていかないことも多く,その場合は長い上皮性の付着で改善していると推測している.あるいは,結合組織性の付着に置き換わり,歯根膜や骨が回復しているかもしれないが,実際は組織切片を作らないとわからない.現在では倫理的な問題により,人の口腔内から歯を含めた周囲ぐちたくよし72 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.12(2022-12)結合組織を歯周組織回復に用いた効果結合組織移植を用いたアプローチ

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