日本歯科評論12月号
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 科学的根拠に基づいて歯周組織再生療法を行えば,重度な骨欠損であっても良好な経過が報告されている.歯周組織再生療法の歴史において,フラップデザインは生体材料の進化に左右されてきたが,骨欠損部に直接アクセスし,最適な条件下で治癒を促進する目的で生体材料と同様にフラップデザインを重視する研究も増えてきている. non-incised papillae surgical approach(NIPSA)は2018年にスペインのRodriguezらによって発表された■).歯周炎による骨欠損に対する歯周組織再生療法を行う際,歯肉縁の位置を維持し,歯間乳頭の保存を可能とする新しい外科的アプローチである.NIPSAは,歯肉の辺縁から根尖方向に遠く離れた■本の水平切開で全層弁を展開し剝離挙上する(図₁).Rodriguezらによると,骨補塡材とエムドゲイン(ストローマン・ジャパン)を併用した場合,歯間乳頭の高さ,角化歯肉の幅,頰側の歯肉縁の位置は安定していた■).また,Wachtelらによると,平均のearly wound-healing indexは1.5±0.7であった■).さらに,臨床的アタッチメントレベル(CAL)の大幅な増加,術後の歯肉縁の退縮,歯間乳頭の陥没,骨欠損の改善,早期の治癒が得られたと報告■)した.コンベンショナルな切開を行うと術後に歯肉の退縮を引き起こす可能性が高い.また,最も血流が乏しい歯間乳頭部に切開を入れると,歯周組織再生療法を行う際に重要となる一次閉鎖が得られないリスクが生ずる.本法では,歯間乳頭部を含めた歯根上部の歯肉を触らないことで再生のスペースが維持される.そのため,これまで難しいとされてきた骨縁上の骨欠損に対しても再生の可能性が高まると考えられる. Rodriguezらは,2019年に結合組織移植を併用したNIPSA(図₂)を発表し,深い頰側の裂開,軟組織の欠損,または歯の位置異常(特にボーンハウジングの外側に配置された場合)などのより重篤な症例が適応であり,このような難症例に対しても良好な結果が出たと報告■)している.また,同年にNIPSAもしくはMISTで治療された各患者に対しての後ろ向き研究が報告■)されている.その結果,たけしよしはが芳賀本達ひや也口琢善もとたつぐちたくよし64 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.12(2022-12)NIPSAとは低侵襲の歯周組織再生療法による対応③NIPSA──non-incised papillae surgical approach── 剛 吉 樋

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