日本歯科評論12月号
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 骨縁下欠損に対し,歯を挺出することで骨欠損が改善することがある.挺出する際,健全な歯根膜が歯冠側へ移動すると歯槽骨も同様に歯冠側に移動する.その結果,骨縁下欠損が改善する.矯正的挺出のデメリットは,基本的に失活歯だけが適応であること,治療期間が長いことなどが挙げられる.また,骨縁下カリエスに対し,挺出後に歯冠長延長術を行った場合,歯冠歯根比が悪化してしまう(図₁)が,歯周炎罹患歯の場合,歯冠歯根比は矯正的挺出を行うことで改善する.なぜなら,歯根が歯槽骨に埋まっている面積は変わらないが,挺出により歯冠側の歯質を削除し,補綴するからである.そのため歯冠歯根比は改善する(図₂)■).Wangらの垂直的骨造成のdecision treeでは,■mm未満の垂直的骨造成の方法の■つとして,矯正的挺出が記されている■).外科的侵襲なく,ある程度の骨増生が可能である点は大きなメリットと考える. 矯正的挺出のメリットとして,軟組織の獲得も挙げられる.図₃・図₄は,前医で1の根管治療を受けた際のパーフォレーションにより歯肉が退縮してしまい,当院にてインプラント治療を希望された症例である.硬組織と軟組織の獲得のために矯正的挺出を行い,■カ月で垂直的な角化歯肉の獲得と若干の骨の新生が認められた.その後,GBRを行った.GBRを行う際,再生の場を確保するためには歯肉が必要となるが,外科的に軟組織の移植を行わずに角化歯肉を獲得できることは非常に大きなメリットであると考えている.■カ月後,インプラント埋入手術を行った.術後■年の現在,経過は良好である. このように矯正的挺出を行うことで,骨縁下欠損の改善や歯肉の垂直方向への増大,垂直的な骨造成など多くのメリットがある.本稿では,再生が困難とされている骨縁上欠損に対し,矯正的挺出や歯周組織再生療法で対処した症例を提示させていただく.たけしはが芳賀ひ口琢善ぐちたくよし38 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.12(2022-12)矯正的挺出₁.挺出による骨の造成₂.挺出による軟組織の造成 剛 樋既存の歯根膜を⽣かした再⽣療法──矯正的挺出による骨欠損の改善──

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