日本歯科評論10月号
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 谷田部 優82 THE NIPPON Dental Review Vol.82 No.10(2022-10)企画主旨  ノンメタルクラスプデンチャーにどのようなイメージを持っているだろうか.一般臨床家の間では「ノンクラスプデンチャー」として知られているが,欧米では「フレキシブルデンチャー」あるいは「ナイロンデンチャー」と呼ばれており,60年以上の歴史をもつ義歯である.弾力性のある義歯床用樹脂が歯面を覆うことで維持力が得られる義歯であり,メタルクラスプを用いた義歯と比べて目立ちにくく,壊れにくいため義歯を薄くでき,金属アレルギーの問題もないため,患者のニーズに合致したことで日本でも2000年初め頃から一部の臨床家の間で使われるようになった.2008年にバルプラストが日本国内で薬事認可を受けると多くの材料が上市され,急速に広まったが,軟らかい樹脂であり,歯面を覆うことから問題視する意見も少なくなかった(図₁).そこで,日本補綴歯科学会では2013年にポジションペーパーを発行し,金属構造物を使用した義歯も含めて「ノンメタルクラスプデンチャー」と呼称し,臨床に用いる際の指針を示している■)(図₂). パーシャルデンチャーの設計は,教科書に示されているように「義歯の動揺の最小化」「予防歯学的配慮」「破損の防止」「生体追従性」といった設計原則を守ることが求められている■).さらに,異物感,発音障害,審美性にも配慮した設計も必要である■)(図₃).ノンメタルクラスプデンチャーの設計を考える際も同様の配慮をすべきであるが,特に懸念される歯周炎のリスクについては,システマチックレビュー■)からも明らかな結論は得られていない.自身の臨床経過からはほとんどの症例で歯周炎を惹起することはない(図₄)が,なかには歯肉の炎症を認める症例も経験する(図₅)ことから口腔と義歯の清掃状態,メインテナンスの有無,欠損状態,樹脂の種類,義歯の設計など,さまざまな要因が関係していることは間違いなさそうである. 特別連載臨床活用のポイントノンメタルクラスプデンチャーノンメタルクラスプデンチャーのの治療ガイド治療ガイド――パーシャルデンチャーの基本原則から考える

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