ブックタイトルapollonia_201608

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概要

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2016.08 G03充填とは 一般的に初期の歯科疾患では、病態に対する患者さんの認識が低く、カリエスや歯周病に対する危機感も少ないことが多いと思います。小さなカリエスや、初期の歯周炎の発生の予防のためにどこで介入するかは、歯科医師の診査・診断に委ねられることになります。初期の歯科疾患にどう対処するかは、侵襲の大きなトラブルを防ぐ岐路ともなります。 昨今、充填といえばコンポジットレジン修復が選択されますが、今月は予防の観点から、グラスアイオノマーセメントに着目してみたいと思います。グラスアイオノマーセメントの物性 グラスアイオノマーセメントは、ポリカルボキシレートセメントの接着性に強度を加えたセメントです。液の主成分はポリカルボキシレートセメントと同様のポリアクリル酸で、粉はシリカ、アルミナ、フッ化カルシウムを混ぜてガラス化させたものを粉砕したものです。教科書的には、グラスアイオノマーセメントはキレート反応により硬化すると書かれています。キレート反応とは、液は酸性で粉は塩基性なので、酸―塩基反応で硬化し、反応して出来た生成物がキレート構造になっているということです。 グラスアイオノマーセメントは、硬化途中に水分や唾液に触れると、接触部分の硬化が阻害され白濁する「感水」という現象が起きます。そのため、硬化するまでの間にバーニッシュを塗布するという操作が必要になります。また、硬化初期には圧縮強度が低く、十分な物性が得られない可能性があります。この欠点を補うために開発されたのが、練和後に光照射で硬化させる光硬化型グラスアイオノマーセメントです。充填より予防 一般的には、カリエスは感染病と考えられています。エナメル質の脆弱性の個体差は、エナメル質形成不全症のような特別な場合を除いて、経験上あまりないのではないでしょうか。カリエスは、食生活に注意し、歯ブラシやフロスを用いて歯牙の清掃を十分に行えば発生を防ぐことができ、歯周炎に関しても同様なことがいえると思います。 ただ、歯科医療は原因除去に力を注ぐような医療体制といえるでしょうか。今年4月の保険改定では、エナメル質のカリエスの予防に関して点数が算定できるようになり、フッ化物塗布の点数も算定できます。グラスアイオノマーセメントとは 粉末はフッ化物を含むアルミノシリケートガラス(alimino-silicate glass)、液はポリアクリル酸(polyacrylic acid)水溶液からなり、ASPAセメントとして普及したものである。その後、改良が加えられてレジン成分が加えられたものがある。用途は、修復、合着、裏層、支台築造、象牙質知覚過敏症の治療や予防填塞などに使用される。医歯薬出版『保存修復学専門用語集』より改変glass ionomer cement