ブックタイトルapollonia_201604

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概要

apollonia_201604

2016.04 G11院長 前回までに、全部床義歯の咬合採得まで理解したかな? 認知症の患者さんの上下の総義歯を作製することはめったにない。まず、使用できる片顎を修理、リベース、ティッシュコンディショニングなどをして、それに合わせて新義歯を作製する。上下顎作製と片顎作製では難易度が違うんだ。K君 院長でも手に負えない難症例があるんですか?院長 歯科医師の勘に頼る認知症の患者さんの治療は、全て難症例だよ。「安全で簡単、再治療の少ない治療」が求められる。義歯でいえば、「壊れにくいもの、調整の少ない治療」だ。完成後に微妙な調整はできないから、各ステップを着実に行うのが大切なんだ。K君 認知症の患者さんに求められるのは「シンプル治療」ですね!院長 なかなか良い表現だね~。では、部分床義歯の「シンプル咬合採得」を勉強しよう。まずどうしようか?K君 欠損が小さければバイト用ワックスを直接噛んでもらい、大きければ咬合床を作り、蝋堤を軟化して噛んでもらうしか考えられません。 あ、咬合採得した咬合床を模型に付け、骨格的に正しいかチェックするのも必要です。院長 正解。ただし、臨床経験上、義歯が入っていても残った歯同士で噛みたがる人が多い。残存歯同士で噛めるように下顎が変位することが多く、前歯しかなければ前で噛み、片顎しかなければそこで噛むのは当然だよね。すると咬合力が強くかかり、残存歯牙は余計にダメージを受ける。 さらに、無歯顎でも最後まで歯が残っていた所で噛むので、しばしば下顎が誘導されることもある。K君 院長は、最後まで残っていた歯牙の場所が分かるのですか?院長 もちろん。歯牙がなくなると歯槽骨が吸収する。歯槽骨の吸収が少ない所が最後まで歯のあった所。……さて、どこだと思う?K君 歯槽骨が出ている所ですね。院長 その通り。すれ違い咬合では、「咬合採得の間違い」「噛み癖を加味しない義歯」「挺出歯を放置した不揃いの配列」などで、旧義歯が壊れたり痛かったりして使用できないことが多いんだ。 今回はカリエス処置、残根削合などの前処置はおおよそ行われていると考え、咬合採得方法を考えよう。義歯作製前の前処置は後日詳しく説明するよ。総義歯と同じ部分も多いけど、復習と思って勉強しよう。A.模型のチェック 模型に正中線やランドマークを記入する。咬合平面、挺出歯、フレアーアウト歯、鉤歯の傾斜などはある程度前処置しているので、あらためて確認する。臼歯が多く含まれている義歯だったら、対合歯列や対合義歯の人工歯の配列、咬合平面を観察する。 対合歯列が不良の場合は、すぐまたは完成後のいずれかに修正するかを判断する。① 模型と咬合床のチェック