ブックタイトルap_tachiyomi_1311
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0312013.11特 集新しい診療メニューと技た。高額治療をした患者さんがしばらくして来院。小さな声で、「先生、セットした後、肩凝りと腰痛がひどくて……」と訴えられたのです。それも何人も。 当時の診療室はパーティションもなく、大きな声だと他の患者さんに聞こえてしまうと配慮してくれたのでしょう。クレームには発展せず、通院も続けてくれたのですが、これらの多様な症状の発生時期と補綴の時期とが重なっているのは一目瞭然だったので、「これは自分の責任だ。何とかしなければ」と本当に悩みました。 日本だけでなく、アメリカ、スウェーデンの著名な歯科医師にも相談しましたが、答えは返ってこず、ある高名な先生からは、「そんな患者は相手にしないこと!!」とアドバイス(?)されたのを覚えています。 これは、歯科に限らず近代西洋医学の限界によるものではないかと思います。まず、診断によって自分の対応範囲を決め、それに合わない症例は「原因不明」としてふるい落としてしまうのです。「不定愁訴」という曖昧な表現も、このような発想から生まれてきたものかもしれません。 しかし私は、とにかく目の前の患者さんを何とか楽にしなければならないと考えました。そこから膨大な試行錯誤と予後の記録が始まったのです。先の見えない中での作業でしたが、それでも私の治療を受け続けてくれた大勢の患者さんに支えられました。咬合治療のデータを蓄積 現に悩んでいる患者さんを前にして、歯科医療が対応できることは限られていると感じたため、他のアプローチを探しました。カイロプラクティック、整体、気功なども学び、総合的な治療方法を次第に作り上げていきました。カイロプラクティックからは、アプライド・キネシオロジー(ジョージ・グッドハートにより1964年に提唱されたカイロプラクティックの診断手法。神経による筋肉の運動制御を、筋肉に圧をかけて判別し、健康度合いなどを評価する)を学び、気功、整体などに特有の身体に関する考え方を歯科に応用するなど、試行錯誤しながら咬合について考え、実践を重ねていきました。 単に症例を前にして「こうではないか?」と仮説を立てて実践するだけでは再現性がありません。母校に社会人大学院生として戻っていた時、基礎系の研究者から「咬合と不定愁訴が関係している可能性は、アカデミアの世界にいる歯科医師のわれわれでも全く否定するつもりはない。しかし、われわれと同じ言葉で説明できる臨床医がいないのだ」と指摘されました。いわゆる全身咬合論の問題点は、咬合の変化によると考えられる全身状態の悪化・改善を定量化し、しかも疫学的に説明力のある形に落とし込む取り組みがなかった点にあるのだと思います。 私は、1990年から補綴による咬合の変化と全身との関連に着目した診療を行うようになり、2年後からは咬合への介入による改善の度合いを患者さんごとに記録してきました。以来、25年間で1000人以上の患者さんを診療し、蓄積されたデータの分析も行いました。これにより、どのような症状が改善しやすく、何が改善しにくいのかを明らかにし、改善できる可能性がある不定愁訴を探っていま