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115 2013.04 母乳育児は健康阻害要因?―今回、ADAが機関誌The Journal ofthe American Dental Association 2013;144に掲載したレポート「Salone, LR., et al.,Breastfeeding :An Overview of Oral andGeneral Health Benefi ts」によれば、今後ADAは、「乳歯萌出後も母乳による育児を支持する」ということです。これまでは「口腔内細菌が繁殖して乳歯にう蝕が発生するから、母乳育児を中止すべし」と勧告してきたわけで、その主張の真偽を別にしても、過剰な介入ではないかと思われますが、いかがでしょうか。安田 母乳による育児を続けようが、ある時点で止めようが、口腔内の細菌叢が成長とともに形成されるのは自然なことです。母乳育児への制限は、「う蝕原因菌」が母子感染するのを防ぐための提案だったのでしょうが、やはり、かなり無理があったのではないでしょうか。ただし、「自分たちがこれまで提唱してきた母乳育児中止にはエビデンスがない」ということを率直に認めたADAの態度には、一定の評価をすべきだと思います。―アメリカでは、「18世紀イギリスでも母乳育児が歯の健康を害していた」との指摘が見られます(注)。ただし、この場合の「歯の病気」とは、実際は乳歯う蝕ではなく、乳歯萌出時に現れる消化器系の疾患を指し、当時、乳幼児死亡の主な原因の一つとなっていました。う蝕とは別の疾患であるにもかかわらず、乳幼児死亡の原因を母乳育児に求める傾向。アングロサクソン系の人々の間では、「母乳は危険」というような感覚が共有されていたのでしょうか。安田 社会文化史的なことは分かりませんが、・母乳育児のように動物なら当然行っていることを「健康阻害要因」と見なすという思考は、われわれ日本人にはあまりなじみのない習慣かもしれません。―しばしば「欧米人は『自分たちが動物的でないこと』に極めて強い価値を置く」と指摘されますから、そういった背景もあるのでしょうね。安田 日本の歯科医療がアメリカ由来のものである以上、そのような価値観に基づく過剰なアナウンスで失われる信頼歯科界の「定説」を疑う