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115 2013.03 行き過ぎた「個人情報保護」の見直しを公法上の権利義務に過ぎない―東京地裁で争われた裁判は、個人情報保護法(2005年4月)を根拠として、患者側からカルテ開示を求められたのに応じなかった医療機関に対して、「精神的苦痛を受けた」として損害賠償を請求したものです。個人情報保護法施行から約1年後に発生した紛争でした。これに対する裁判所の判定が、「請求を棄却する」として医療機関側の立場を擁護する内容だったのですが、どのような理由からなのでしょうか。安田 医療関係者だけでなく、患者さんの側にもしばしば誤解があるのですが、医療に関する法律の多くは、専門職である医師・歯科医師に対して、国家資格を管理する国が、特定の義務を要求、もしくは特定の行為を禁止するという内容になっています。このように、国や自治体が関わる法律を「公法」といいますが、・公法上の責任は、私人間で生ずる損害賠償などには直ちに結び付かないというのが、法律家の間の共通理解のようです。従って、判決理由は「個人情報保護法は患者に開示請求権を与えているわけではなく、裁判以外の自主的な解決方法を探すべき」とされました。個人情報保護法は公法であり、個々のケースで個人に開示請求権などの権利を認めるものではないと解釈され、同時に「裁判以外の方法で」ということで、同業者団体を窓口にした自主的ルールの策定を求めているという2点が注目されます。―公法には、個々のトラブルについての責任などに関する規定がないということなのですね。安田 有名なのは、医師法19条1項の応召義務ですが、医師法、歯科医師法が公法であることから、患者側から医療者側に対して、「オレを診ないと医師法違反で訴えるぞ」と直接的に要求することは、法律的には成り立ちにくいと解釈されています(本誌2012年12月号特集参照)。 個人情報保護法が事業者に求める個人情報保護の考え方も、同様に公法として捉えるべきだと解釈されます。個々の案件について開示請求が乱発され、それを理由とした民事訴訟が増加する事態は、社会の公正注目されるカルテ開示請求訴訟