DHstyle 2025年春号
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◉ 図❶ 歯科治療で大きく口を開けたことが顎関節症の発症や悪化に繋がるケースがあるこれってもしかして……? 歯科衛生士が気づく‼ アゴのSOS 93ーリングのときに口が開きづらい」、「顎が震える」、「長く口を開けていられない」、「顎が痛くなる」といった患者さんを経験した人は多いと思います。 このような患者さんは、たいてい日常生活では不自由を感じていませんが、歯科治療を苦手に思っていることが多いようです。これらは、「かくれ顎関節症」といって、潜在的な顎関節症予備軍です。日常生活では、それほど口を大きく開けなくても生活できてしまいます。また、コロナ禍では、マスク生活や在宅勤務により、あまり会話をしない習慣がついてしまったことから、かくれ顎関節症は非常に増えていると思われます。このような患者さんは、歯科治療で大きく口を開けたことをきっかけに顎関節症症状が強くなるケースがあります(図1)。そのため、事前にかくれ顎関節症を把握し、大きく開口した際に発症する可能性を説明しておかないと、患者さんは歯科治療が原因で顎関節症になったと考えてしまいます。 さらに、口が開かないことは、他の口腔機能に悪影響を与え、早期に口腔機能低下症へ移行するリスクが高まる可能性もあります。 そこで歯科衛生士のみなさんには、もっと顎関節症について知り、患者さんが自分では気づいていない問題を早期に把握し、適切な対応をすることで、顎関節症の発症や慢性化を予防し、患者さんのQOL(Quality of Life)に寄与していただきたいと思い、この連載を企画しました。 今回は第1回として、次ページより歯科衛生士が通常の臨床で遭遇するアゴに関連したさまざまな問題について解説します。その後、第2回として「顎関節と顎関節症の基礎知識」、第3回では「顎関節症と同じような症状を示すのですが、顎関節症ではないので注意が必要な疾患」。そして、第4回では、「顎関節症に気づいたときに歯科衛生士が行う顎関節症の治療・管理」について、実際の臨床に沿ってわかりやすく解説する予定です。 現在、日本顎関節学会では、歯科衛生士のみなさんに顎関節症に関する知識と実際の管理を習得して臨床で活躍していただくため、認定歯科衛生士制度を発足するとともに、歯科衛生士のための講演会やシンポジウムなどを企画しています。興味を持たれた方は日本顎関節学会HP(https://kokuhoken.net/jstmj/)をご覧ください。 顎関節症とかかわることで、歯科衛生士としてのあらたな発見があり、一般診療におけるスキルも向上するはずです。本連載がみなさまのやりがいを増やす一助となれば幸いです。グリーンデンタルクリニック 歯科医師 島田 淳本連載の趣旨

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