92 DHstyle 2025 SPRING 歯科衛生士は、患者さんから「身近な専門家」として頼りにされる存在であり、う蝕や歯周病に関する知識だけではなく、より広範囲の知識が求められるようになってきています。 歯科衛生士のおもな仕事の1つである歯科保健指導でも、最近では食育支援、高齢者や要介護者の摂食・嚥下機能訓練が新たな分野として注目されています。平成30年度の診療報酬改定では、ライフステージに応じた口腔機能管理の推進として、小児の口腔機能発達不全症、高齢者の口腔機能低下症が追加されました。加えて、令和6年度の診療報酬改定においては、口腔機能指導加算(歯科衛生士が口腔機能の発達不全や低下を有する患者さんに対して口腔機能にかかわる指導を行った場合に算定できる)が収載され、歯科衛生士が口腔機能管理にかかわる範囲が広がってきています。 口腔機能発達不全症や口腔機能低下症では、口腔機能として口腔周囲筋や舌などの運動器が重要とされていますが、顎関節も咀嚼をはじめとした顎口腔機能にかかわる重要な運動器です。 顎関節症は、「顎関節や咀嚼筋が痛む」、「顎を動かすと音がする」、「口が開かない」などといった症状をおもに訴える運動器の機能障害です。 顎関節症症状のほとんどは、自然経過が良好なことが多いですが、なかには慢性化してしまう場合があります。近年、顎関節症の発症には、悪習癖やストレス、生活習慣などが積み重なり、個人の許容範囲を超えると顎関節症を発症することや、顎関節や咀嚼筋の慢性的な痛みには、安静にするよりも動かすこと(運動療法)が症状の改善には必要であることがわかってきました。そこで、より早く症状を改善して慢性化を防ぎ、再発を防止するためには、患者さんが顎関節症の正しい知識をもち、自らの病態を知り、症状をコントロールするためのセルフケアが重要であることが世界的に認識されています。 セルフケアの指導を行うためには、患者さんとの信頼関係を築き、患者さんの話のなかから問題となる生活習慣や悪習癖を見つけ出すことが重要です。これらは、歯周病において歯科衛生士が行っているセルフケア指導や口腔内の管理にたいへん近いことから、顎関節症においても歯科衛生士のみなさんの活躍が期待されています。 顎関節症への対応は難しいと思われるかもしれませんが、実は顎関節症の患者さんは、みなさんの身近にたくさんいるのです。たとえば、「スケ多くの知識が求められる歯科衛生士顎関節症って?歯科衛生士が顎関節をみる意義和気 創 So WAKE神奈川県・みどり小児歯科 歯科医師若槻聡子 Satoko WAKATSUKI日本歯科大学附属病院 歯科衛生士「かくれ顎関節症」を疑ったら?
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