デンタルダイヤモンド 2025年2月号
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表❶ IOSの普及・導入がもたらす影響IOSの普及によるデジタルデンティストリーの進展作業速度に優れ、患者負担も小さく、印象採得法としては今後の主流となるIOS導入による歯科技工プロセスのデジタル化物理的な模型を用いない歯科技工作業・補綴装置製作を可能とした。スキャンデータはクラウドサービスを通じてシームレスにラボサイドへ提供される32 歯科医療におけるデジタル技術の進化は、補綴物製作や治療のプロセスを大きく変革している。とくにCAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufactu­ring)システムや口腔内スキャナー(Intraoral Scanner:以下、IOS)によるデジタルワークフローは、効率性や精度の向上に寄与している。一方で、従来のアナログからデジタルへその手法が移行する過程で、少なからず課題が生じているのも事実である。モデルレスの補綴物製作が普及するなかで、適切な咬合面形態をどのように設計するかが大きな課題となっている。 本特集のテーマである「デジタル咬合器」とは、「デジタルワークフロー内で、アナログ咬合器に代わって患者の咬合や顎の動きをシミュレーションするためのツール」と定義できる。しかし、現時点では臨床における効率的な使い方や精度について不明な点が多い。そこで本特集では、アナログ咬合器がどの程度生体の動きを再現していたのかを再検証し、デジタル咬合器で現状できることをあきらかにする。さらに、今後予想されるデジタル咬合器の進化の方向性について考察する。1.デジタル咬合器とは 近年、CAD/CAM技術の普及により、コンピュータ支援による歯科治療、すなわち「デジタルデンティストリー」が急速に進展している。なかでも、IOSの普及による影響は大きい。IOSの導入によって、模型製作から補綴物設計までの歯科技工プロセスが、モニター上で完結可能となった(表1)。 しかし、従来の技工操作でとくに重要な手指感覚をデジタル咬合器で再現することは難しく、新たな課題となっている。近年、顎運動測定技術も進展しているが(図1)、すべての症例に適用できるわけではない。そのため、デジタル咬合器の効果的な活用方法が求められている。1)デジタル咬合器の概要 デジタル咬合器は、特定のソフトウェアとして存在するものではなく、一般にComputer Aided Design(以下、CAD)のオプション機能として実装されているものである。 現状のデジタル咬合器は、アナログ咬合器がモニター上に表示されるのみである(図2)。基本的な機能は従来の半調節性咬合器と大差なく、アナログからデジタルにその作業環境を移行したものになる。 アナログ咬合器はモデルに応じて性能が大きく異なり(図3)、とくにコンダイルリポジショナーなどのオプションパーツを利用することで、性能が向上するものもある(図4)。一方、デジタル咬合器はモデルによる差は少なく、CADソフトウェアの種類によって区 Introduction デジタル咬合器の臨床応用

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