PART3下顎の神経・脈管耳介側頭神経鼓索神経顎動脈下歯槽神経・下歯槽動静脈下歯槽神経から分枝した顎舌骨筋神経下顎神経外側翼突筋舌神経下顎孔顎舌骨筋神経溝BA図 2 卵円孔直下で下顎神経の前面から分枝した舌神経は,下歯槽神経の前内側を併走して下行する.そして外側翼突筋の下縁付近まで下行すると,顔面神経の分枝であり,錐体鼓室裂を通過してきた鼓索神経(副交換神経線維+味覚神経線維)を受け入れる.舌神経は舌へ向かい,舌前 2 / 3 の舌背粘膜におもに分布し,この領域の知覚と味覚を担う.トガイ孔を通過したオトガイ神経・オトガイ動静脈が,下顎前歯部歯肉から下唇・オトガイの皮膚に至る広い領域に分布する.1 )下顎に分布する脈管 総頸動脈は,甲状軟骨上縁付近(または舌骨大角)の高さで外頸動脈と内頸動脈に分かれる.この内頸動脈の起始部付近は膨らみ(膨大部),知覚線維が多数分布する頸動脈洞をつくる(図 1).頸動脈洞にはおもに舌咽神経が分布し,血圧の調節を行っている.すなわち強い圧刺激を受けると,脳幹の血管運動中枢に情報が伝わり,心拍動の減少と血圧下降を起こす.頸動脈洞と同様の機能は,大動脈弓にも存在する(迷走神経支配). 外頸動脈は下顎枝後縁の耳下腺隙中を上行する.上行中に顔面動脈などを分枝し,関節突起基部のやや下方で終枝である顎動脈と浅側頭動脈に分かれる.顎動脈は,下顎枝内面で外側翼突筋外面に存在する側頭下隙(側頭筋停止部付近と外側翼突筋の間の隙)中を前上方へ向かい走行し,翼口蓋窩へ達する.その経過中,下顎枝部内面では下歯槽神経を分枝し,下顎孔から下顎管に入る.そして下顎骨・歯・歯周組織などに広く分布する.一部はオトガイ動脈としてオトガイ孔を通過し,前歯部唇側歯肉・下唇・オトガイ部の皮膚などに分布する.2 )下顎に分布する神経 下顎神経は三叉神経の第 3 枝で,下顎骨ならびにその周囲組織に広く分布する.中頭蓋窩(蝶形骨大翼)の卵円孔を通過後,下顎枝内面を下行する.下顎神経主枝は,舌神経を分枝させると下歯槽神経(おもに知覚神経)と名を変え,下顎孔から下顎管へ進入する(図 2).また下顎神経が卵円孔を通過した直後に,耳介側頭神経(知覚神経)が分枝する.耳介側頭神経は後走し,関節突起の基部付近を骨面に沿って回り込むように外面へ向かいながら,顎関節・耳下腺・耳介・外耳道・側頭部の皮膚などに広く分布し,これらの部位の感覚を担う.さらに下歯槽神経から顎舌骨筋神経(運動神経)が分枝し,顎舌骨筋・顎二腹筋前腹の運動を担う.47下顎枝内面で分布する下顎神経(左側)
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