チェアサイドで見る臨床口腔解剖学
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前頭骨 鼻骨 下眼窩裂頰骨下稜歯槽突起 前頭突起頰骨突起梨状口頰骨図1 上顎骨は多くの骨と連結・縫合する.また視覚・嗅覚・味覚などに関与する眼窩・鼻腔・口腔などの構成に関与する. 頰骨突起の下縁は頰骨の下縁に続き,この隆線を頰骨下稜(頰骨歯槽稜)といい,第一大臼歯に向かって走行する(文献28より許可を得て転載). 上顎骨は顔面の中心に位置し,左右対称に正中で縫合している 1 対の骨である.下顎骨を除くと,上顎骨は頭蓋骨のなかでもっとも大きく,頭蓋骨前面の大部分を占め,左右の頰骨・上部の前頭骨に繋がる.そして眼窩底・鼻腔側壁から下壁,口腔の上壁となる硬口蓋前方を構成する.上顎骨の基本構造は,中心の上顎骨体と 4 つの突起が突出して構成される(図 1 ~ 3).上顎骨体は上顎骨の中央部を占め,なかに副鼻腔の 1 つである上顎洞を容れている.この上顎洞は,上顎骨体内面の上顎洞裂孔によって鼻腔方向に開いている.上顎骨体の前面は前頭突起から続く眼窩下縁を形成し,その下方にある眼窩下孔は多くの脈管・神経(眼窩下動静脈・眼窩下神経)が通過する.眼窩下孔の下方には口角挙筋の起始部である犬歯窩がある(図 2 , 4).上顎骨体の内側方には鼻切痕があり,反対側の同名切痕と合し,洋梨状を呈する梨状口を囲んでいる(図 1 , 4).歯槽突起は上顎骨体から下方へ隆起して歯列弓の土台となるため,全体として弓状を呈している.また歯槽突起内で歯根を入れる陥凹部が歯槽である.前歯部左右で4 個の歯槽周囲部は,胎児期には独立した切歯骨であった.上顎骨とは切歯縫合で接していたが,成人では癒合して 1 つの上顎骨となる.1 )上顎骨の 4 つの突起①前頭突起:上顎骨体内側から上方へ向かう突起で,鼻骨・涙骨・前頭骨と接する.②頰骨突起:上顎骨体外側から側方に向かう突起で,頰骨と頰骨上顎縫合により結合し,頰骨弓へと移行する.③歯槽突起:上顎骨体下面から下方へ向かう突起で,蹄鉄形を呈する.歯槽突起には上顎の歯が釘植し,上顎の歯列弓の基盤となる.歯の歯根が埋入するためのくぼみを「歯槽」と称する.④口蓋突起:上顎骨体下面から内方へ向かう扁平な突起で,反対側の口蓋突起・左右の口蓋骨水平板とともに骨口蓋を構成する.8チェックポイント 1前方から観察した頭蓋骨上顎骨の基本形態

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