10口唇に緊張がもたらされるか、矯正歯科治療によってそれが解決したかなどを判断するため、通常は口唇閉鎖状態での撮影を指示する。左記症例では安静時の口唇形態や接触・間隙の状態、上唇と上顎前歯部の相対的位置関係などを把握することで外科的矯正治療における治療計画に反映させることが可能となるため、あえて閉唇を指示せず弛緩させた状態で撮影している。側貌写真における閉唇時の口唇形態とセファログラム上の口唇形態の違いに注目されたい不鮮明なセファログラムでは、計測点を見分けることも骨・軟組織の外形を描くことも困難となる。銀塩フィルム時代に撮影されたかつてのセファログラムでは、しばしば左図のような不鮮明な画像の読影を強いられることがあった。デジタル時代でも、条件が悪ければ同様のことが起こりうる鮮明なセファログラム画像の条件·被写体の動きによるブレがない·分析に用いられる計測点がすべて映り込んでおり、判別が可能である·軟組織が明瞭に映し出されている·鼻尖やオトガイ下部が撮影範囲からはみ出ていない規格性のある鮮明な像を得ることにより可能となること·計測した値と平均値との比較·経時的に撮影したセファログラムを比較し成長や治療による変化が把握できる·前歯の歯根と歯槽骨の位置関係の評価(ボーンハウジングの確認)·頚椎性状による成長段階の評価(頚部椎骨成熟法)·舌の大きさや位置の評価·下垂体窩の大きさの評価(異常な変化がある場合は下垂体腫瘍を疑う) 通常は咬頭嵌合位で撮影する。反対咬合患者で切端位が取れる場合などでは、下顎が上顎前歯に誘導されて咬頭嵌合位が前方位をとるため、切端位での撮影も加え治療方針立案の参考とする(第6 章 96 ~ 103 ページ参照)。 また、通常は撮影時に口唇の閉鎖を指示するが、口唇閉鎖が難しい場合や、外科的矯正治療の術前資料などにおいて術後の顎位における口唇状態を予測しやすいよう安静時のやや開いた口唇を撮影することがある(図 6 )。撮影時の注意点④ 口唇状態を設定する撮影時の注意点⑤ 不鮮明な像を撮らない咬合位と口唇について図6図7
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