口唇裂・口蓋裂治療
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3Ⅰ1 元 大阪母子医療センター副院長/ 2 大阪大学名誉教授68口唇裂初回手術の基本 (西尾順太郎)変形に加えて,口輪筋や鼻筋の裂部での断裂といった筋肉走行異常によって,筋の作用方向に軟組織が牽引されることによる.1 口唇の吊り上がりの修正法(図 1) 患側口唇の吊り上がりの修正法として,白唇下部1 / 3 に三角弁を形成する方法(Tennison-Randall 法)2 ,白唇上部 1 / 3 に三角弁を形成するMillard 法 3 ,前二者の複合型であるMillard 変法 4 ,wave line 切開を用いるPfeifer 法 5 が代表的な皮膚切開法といえる.Tennison-Randall 法やMillard 法では三角弁が大きく,成長にともなって水平方向の瘢痕が目立つ.また,Pfeifer 法では切開線がシンプルであるという長所があるものの,左右均等なキューピッド弓の高さを得るのが困難な場合がある.筆者は長年 Millard 変法を用いてきたが,最近はB-flapの水平切開をより小さくする小三角弁法を用いている.作図に際しては健側人中稜上に仮想縫合線を描き,これを参考に人中唇および外側唇の作図を行う.外側唇では赤唇縁直上に幅1.5mm 程度の小三角弁を形成する. この小三角弁の基部上端が上唇外反線に合致するように設計する.外側唇の披裂縁切開の設定は,人中稜を形成するうえで重要なポイントで,できれば最高豊隆部に入れる.鼻翼基部点の延長線上に約 2 mm 程度の小切開(点⑮〜点⑯)を加える.点⑯〜点⑰の長う)キューピッド弓の吊り上がりによる変形に加えはじめに片側性口唇裂西尾順太郎 1 /古郷幹彦 2 口唇裂手術の目標は,左右対称で自然に見える機能的な口唇・外鼻を形成することにある.口唇裂では特有の形態的特徴がみられるが,これに対し口唇・外鼻の成長発育をふまえたうえで適切な処置を施せば,偏位や変形はかなり改善できる.そのためには,各々の問題点に対する修正手段を知ることが重要であり,これらのテクニックが集大成されたものが手術時のデザインに反映されなければならない.本稿では筆者が行ってきた手術術式 1 を中心に,口唇裂初回手術の基本について述べたい. 片側性口唇裂では, 患側(裂のある側を患側といて,披裂部口唇組織の不足,患側人中稜の不明瞭がみられる.外鼻に関しては患側鼻翼の扁平化,患側鼻翼基部の後方,外方,下方への偏位,鼻柱基部の健側への偏位と傾斜,鼻中隔軟骨前縁の健側偏位,患側鼻孔の拡大,鼻尖の健側偏位がみられる.このような変形は口唇外鼻の土台となっている上顎骨の口唇裂の手術

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