口唇裂・口蓋裂治療
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大阪大学大学院歯学研究科顎顔面口腔矯正学講座28図 1 右側唇顎口蓋裂患者の混合歯列期の咬合状態 前歯部反対咬合で,上顎歯列弓に著しい狭窄がみられる.合の解消に焦点をあてる.また,成長発育終了以降の矯正歯科治療では,上顎歯列の形態や上下顎骨の位置を評価し,最終的な咬合と顔の整容性の改善を図る方法について記す. 口唇裂・口蓋裂患者は,前歯部反対咬合や中顔面の陥凹,上顎歯列の狭窄などの特徴を示すことが多いとされている 1(図 2).これは,顎裂の修復にともなう瘢痕拘縮などにより,上顎骨の前方への成長が阻害されることで生じる 2 .前方成長の阻害の程度は患者によってさまざまであり,裂部の組織欠損はじめに口唇裂・口蓋裂患者の注意すべき成長発育と矯正歯科治療の必要性山城 隆/伊藤慎将/黒坂 寛/谷川千尋/犬伏俊博 口唇裂・口蓋裂患者は,前歯部反対咬合や中顔面の陥凹,上顎歯列の狭窄などの特徴を示すことが多いとされている 1(図 1).これらの特徴は,口唇裂・口蓋裂の裂部の修復手術にともなう上顎骨の成長阻害に起因していると考えられている 2 .本稿では,このような問題を矯正歯科治療によってどのように改善するのか,とくに成長発育期および成長発育終了以降の時期に焦点をあて,その具体的な手技とその背景となる考え方について述べたい.なかでも,成長発育期の矯正歯科治療では,上顎骨の前方成長阻害を改善し,上顎歯列の拡大や前歯部反対咬3口唇裂・口蓋裂治療における矯正歯科治療

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