Phase 1 歯髄の診断Phase 2 う蝕除去法の選択Phase 3 選択的う蝕除去による露髄の回避Phase 4 非選択的う蝕除去後の露髄への対応Phase 5 症候性不可逆性歯髄炎の兆候を有する深在性う蝕への対応 まず,Phase 1 は,歯髄の検査とそれに基づいた診断名を決定する.ここでは,主に術前の歯髄の状態を深く追求し,その状態に応じた正しい診断を行うことで,正しい治療選択につながることを目的としている.本ディシィジョンツリーの特有の考え方として,術前の症状の強弱を診断に加味するようにしている.その強弱の考え方としては,食事がとれないなど,生活に支障が出る状態が生じているものを中等度以上としている(左のディシジョンツリー太字部分). 診断名を確定させた後は,どのようにう蝕を除去していくのかを決定する.ここで扱うう蝕除去法は,「選択的う蝕除去」と「非選択的う蝕除去」である. 2 つのう蝕除去法を術前の歯髄の状態に合わせて適切に選択し,う蝕除去完了後の状態からさらに治療の選択を行う. Phase 3 からは,それぞれの歯髄の状態から決定したう蝕除去の結果,その先にある歯髄への対応を行っていく.Phase 3 は,術前の症状がまったくないか,軽度の症状がある歯に対して,選択的う蝕除去を行い,意図的に露髄を避ける方法である.選択的う蝕除去でう蝕を残す量や, 1 回法, 2 回法のどちらを選択するかがポイントとなる. Phase 4 は,非選択う蝕除去を行った後に露髄を起こした際の露髄面への対応を選択する.露髄への対応は,直接覆髄や断髄によって歯髄を保存する方法と,抜髄までさまざまな方法に分かれる. Phase 5 は,臨床的に即座に対応が迫られる,症候性不可逆性歯髄炎に対してのルートである.基本的には抜髄を選択するべきであるが,現在,このルートに歯頸部断髄を行って歯髄を保存する治療選択も盛んに行われている.プロローグ 深在性う蝕の基礎知識15
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