I LACEPSERUTAEF歯槽骨骨折Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Kagawa University Faculty of MedicineDiagnosis and Treatment of Alveolar Bone FracturesSukegawa Shintaro香川大学医学部歯科口腔外科学講座連絡先:〒761‐0793 香川県木田郡三木町池戸1750‐1address:1750-1 Ikenobe, Miki-cho, Kita-gun, Kagawa 761-0793助川信太郎 歯槽部外傷には主に歯槽骨骨折,歯の外傷,またはその両方の合併をともなっており,歯科口腔外科領域における救急疾患の 1 つである.歯槽骨は,顎骨と歯を結ぶ骨で歯槽突起を指し,機能的・組織学的には歯根膜が入り込んでいる外胚葉性間葉由来の固有歯槽骨,周囲の基盤となっている中胚葉由来の支持歯槽骨から構成されている.臨床的には,顎骨歯槽突起のなかで支持歯槽骨にまで及ぶ骨折を歯槽骨骨折,固有歯槽骨に限局した外傷を歯の外傷として扱うことが多い. 歯槽部外傷は 1 ~ 2 歳の乳幼児と 7 ~ 8 歳の学童に多発する傾向がある.乳幼児は歩行を開始する時期であり,その身体的機能は未熟で運動協調性の発達前期にあたること,転倒しやすいことが原因となる.また, 6 ~10歳の子どもの場合,口腔領域外傷はすべての身体的怪我の約18%を占め,口腔は身体で 2 番目に怪我が多い部位とされている 1 .活動性が向上する学童期にも発生しやすくなる.一方,成人では転倒ばかりでなく,交通事故や暴行,スポーツなどに関連した外傷も発生するようになる.発生部位は,解剖学的理由から前方位に存在する前歯部,とくに上顎前歯部の受傷が多いとされている 2 . 前述のとおり,歯槽部外傷の特徴として小児の受傷が多いこと,ならびに機能的障害を引き起こすことが多いことから,受傷当日または翌日までの医療機関受診が90%以上と,救急疾患として歯科医・口腔外科医が診断,加療する機会が多く,対応法も含めて熟知しておく必要がある. 歯槽骨骨折は,顎顔面外傷患者の多くに歯槽骨骨折を併発しており正確な発生率は不明である.歯槽骨骨折の約 3 / 4 が上顎に生じるとされている3, 4 . 骨折様式としては,segmental fractureを呈しやすく,分離した歯槽骨分節の前後方への変位,軟組織の裂傷,著しい可動性による不正咬合をともなう5, 6 .歯槽部以外には周囲軟組織である口唇裂創や腫脹をともなうことも多い(図 1).[ 1 ]分類 Clark WDらは,歯槽骨骨折を次の 4 つの分類と29特 集 顎顔面骨骨折の診断と治療の実際歯槽骨骨折の診断と治療
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