歯周病と全身の病気の物語
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ところどころボコボコとふくれている。水中にはこれ捨てロールが漂っているのが見えるし、ワイン色のガスが溶け込んでいるところもある。そういえば公国の空もこのワイン色のガスでモヤっていたなあ、と懐かしんでいると、ガスのたまり場にシュ~ッと怪魚の群れが突っ込んでた。窓の外には例の三つ目の怪魚が。私は大慌てで急旋回したが、また「ド、ドン!」。今度は水路の壁に突っ込んでしまった。「おい、船を壊すなよ!」オスカールの鋭い声に、返す言葉もない。潜水艇にはアームが取りつけられている。めり込んだ船首と壁の隙間にアームを挿さし込むと、意外なことに壁はやわらかい。これなら脱出できる!とアームを突き入れた。ズブズブズブ……、たちまち潜水艇は壁から離れた。と同時に、壁の裂け目からぶよぶよした薄黄色のかたまりが漏れ出てきた。「な、なんだこれは?!」驚く私に、オスカールは落ちついた声で「先に移住された先々代様からの手紙にあった。“これ捨てロール”というそうだ」とドロドロの正体を教えてくれた。巨大生命体が取り込む食物中に含まれるこの物質は、公国の住民にとっては無用の長物。これ捨てロールという呼び名もそのあらわれだ。どこからか血の川に流れ込んだこれ捨てロールは、水路の壁に入り込んで堆積するそうだ。壁から離れ、再び潜水艇は進んでいく。水路の壁は滑らかではなく、む第4話           力な歯周病菌がもつような力はない。オスカール王女と2人で潜水艇に乗り込み、血の川の底へ。川の深部は管状の水路となっているようだ。ボコ、ボコという水音に包まれつつ、私の操縦で潜水艇は進んでいく。いよいよ体内旅行のはじまりだというのに、さっきの人食い怪魚の姿が頭から離れない。目が三つもあった。もし潜水艇に穴が開いたら、王女は平気だとしても私の命はないだろう。なにしろ私はただの旅人。強一方、オスカールは怪魚を煙けに巻いての帰艇からずっと、体を拭き続けている。私の視線に「何を見ている。体がベトベトなのよ」公国のまわりに流れる血の川は、住民たちの生活で出たさまざまな廃棄物が捨てられる場所でもある。大量のゴミや汚水、油が混じり合い川の水はドロドロになる。「ドン!」潜水艇に何かがぶつかっ血管内の〝これ捨てロール〟18

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