口腔機能発達不全症が抱えるさまざまなリスク全身への悪影響咀嚼機能低下構音障害嚥下機能低下う歯や歯周病口呼吸歯列不正安藤壮吾88 当院は愛知県名古屋市南区という,どちらかというと市内でも住宅地が多いエリアで開業しており,そのため患者層は乳幼児や妊産婦の頃から,高齢者の治療や往診も含めた,幅広い年齢層に分布されています.当院の医療理念のベースは「予防歯科医療」です.治療主体の診療ベースに限界を感じ,いかに健康であり続けるための医療を目指しながら,今もまだ道半ばだと思っています. 開業したばかりのときは「う蝕」や「歯周病」を未然に防ぐことで精一杯でしたが,ここ数年は「口腔機能」に注目するようになってきました.すなわち「う蝕」や「歯周病」を予防するうえで,不正咬合や悪習癖をともなうような症例は非常にコントロールが難しく,またその後のステージで待ち受ける「加齢」による口腔機能の低下においてもデメリットが非常に多いです.そういった症例を多く経験するうちに,小児期における不正咬合の改善は,末広がりに積み重なっていくリスクを軽減する意味においても,非常に効果的であると考えるようになりました.なぜなら,不正咬合そのものは悪習癖や態癖が原因となっていることが多く,成長期の段階でそれらを改善することはとても重要だと感じるからです. さらに,不正咬合は清掃性や咬み合わせなどの側面からのコントロールも難しいですが,問題となるのはむしろその原因ではないでしょうか.なぜなら口唇閉鎖不全や舌突出癖,低位舌をはじめとする口腔機能発達不全症は,「咀嚼」「嚥下」「発音」「呼吸」を阻害し,う蝕や歯周病,歯列不正のリスクとなるばかりでなく,身体の健康そのものを脅かすリスクファクターとなり得る可能性があるからです. 今回は,末広がりに積み重なっていくリスクを未然に回避するための,一つのキーワードでもある「口腔機能発達不全症」に関して,当院がどのような取り組みを行っているかを先生方と共有したいと思います.口腔機能発達不全症に関する医院の取り組みについて1
元のページ ../index.html#7