岩本 勉図1 口腔の役割は,大きく「生理的な役割」と「社会的(心理的)な役割」に分けることができる.①摂食器官:食べる②構音器官:話す③呼吸器官:呼吸する④表情表出器官: 感情・情動を示す⑤審美構成器官: 心理的満足感を得る生理的な役割社会的(心理的)な役割14 口(口腔)は,人が生きていくため,そして生涯を豊かに過ごすために,重要な機能(役割)を担っています.その役割は,大きく「生理的な役割」と「社会的(心理的)な役割」に分けることができます(図1). 生理的な役割としては,次の3つが挙げられます.①摂食器官としての役割:咀嚼や嚥下を通じて栄養を摂取する「食べる機能」②構音器官としての役割:相手とコミュニケーションを図るための「話す機能」③呼吸器官としての役割:酸素を取り入れ,二酸化炭素を排出する「呼吸機能」 社会的(心理的)な役割として,次の2つが挙げられます.▶口(口腔)の役割④表情表出器官としての役割:心理的な感情や情動に基づく表情を作り出す機能⑤審美構成器官としての役割:口元の美しさや心理的な満足感,社会的な印象にかかわる機能 これらの役割は,歯や歯周組織,顎骨,口腔機能関連筋などの口腔を構成するさまざまな構造とその仕組みによって支えられています.とくに,重要なのは,小児期はこれらの口腔機能が身体的・精神的にダイナミックに変化しながら,それぞれの機能を獲得,発達,習熟していく過程にある点です. ここでは,「食べる機能」「話す機能」「呼吸機能」がどのように発達していくかを解説します.口腔機能の発達について1
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