●参考文献1)Berglundh T, Armitage G, Araujo MG, Avila-Ortiz G, Blanco J, Camargo PM, Chen S, Cochran D, Derks J, Figuero E, Hämmerle CHF, Heitz-Mayfield LJA, Huynh-Ba G, Iacono V, Koo KT, Lambert F, McCauley L, Quirynen M, Renvert S, Salvi GE, Schwarz F, Tarnow D, Tomasi C, Wang HL, Zitzmann N: Peri-implant diseases and conditions: Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Periodontol, 89 Suppl 1 : S313-s318, 2018.2)Herrera D, et al: Prevention and treatment of peri-implant diseases-The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 50 (Issue S26), 4-76,2023. 今世紀に入りインプラント治療は、にわかに脚光を浴びるようになってきた。「骨接合型インプラント」が上市されたばかりのころは、無歯顎の患者を対象とした機能回復処置方法であったが、その後、部分欠損症例にも適応が広がるにつれてインプラント治療が一般化し、令和4年歯科疾患実態調査の概要(厚生労働省)から50歳以上の各年齢層で2.9〜5.9%の国民がインプラント治療を受けていることがあきらかとなっている。さらに、8020運動の推進により、国民の多くが以前と比較し自身の歯を保存している実態もあきらかとなっている。しかし、歯が保存されていても歯周疾患の罹患状況は高値を維持しており、とくに75歳以上では歯科疾患実態調査を行うごとにその割合が高くなってきている。一方で、国民の約8割は1日2回以上のブラッシングを行い、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具も約半数が使用しており、国民の健康意識に伴う行動変容と疾患の実態が一致していないのが現状である。 近年の研究結果から、インプラント治療を受けた一定数にインプラント周囲疾患が発症することが報告されている。歯周病の分類(2017年)1)の発表以降の調査では、インプラント治療を受けた患者の約2割が骨吸収を伴うインプラント周囲炎に罹患することがあきらかになっている2)。このインプラント周囲炎発症の明確なリスク因子の1つに「歯周病の既往あるいは進行」がある。本書では、国民の歯やインプラントの健常な状態をいかに維持し、生涯にわたり健康で、なおかつ人生の終末期においても対症療法しかできない状況にならないようにしたいという想いから、われわれ歯周病専門医からみたインプラント周囲疾患の予防と対処法について著した。刊行にあたって
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