adbcef 症例1:インビザライン・スマイルアーキテクト™のリリース前に行っていた矯正歯科治療を組み合わせた補綴修復治療の必要な症例歯の移動のためのTAD(テンポラリーアンカレッジデバイス)として使うケースもあるが、筆者は、歯の移動量がそれほど大きくなかったり、術前に最終的なインプラント位置が予想し得たりするケースにおいては、②の、先に最終的な残存歯の歯牙位置を予測し、それを見越した位置にインプラント位置をシミュレーションする方法を多く採用してきた。デジタルアライナー矯正においては、歯の初期位置と最終位置をスーパーインポーズで重ね合わせて比較することができるため、それを活用してインプラント位置を決定することができる。 インプラント位置の決定方法とシミュレーションの例、インプラントを埋入できた後の歯の移動への活用方法を図2に示す。デジタルアライナー矯正では、歯の移動量を数値で計測できるため、その移動量からインプラントの埋入位置を計算できる。今回は、₅の遠心移動量が1.5mm、舌側への移動量が1.9mmであることから、移動前の₅から逆算した位置よりも上記の量を調整した位置で、₆部インプラントの埋入計画を行った。インビザライン・スマイルアーキテクト™のリリース前は、このようなケースではインプラントシミュレーションソフトの「バーチャルトゥース」を表示して埋入位置を考察することが多かった(図2b)。232 Technology 一方で、反対側の₆₅部に関しては₄の最終位置がスタート時からほぼ変化がないため、₄の初期位置から逆算した位置でインプラントの埋入位置を決定した(上顎のインプラント位置の決定は下顎の決め方と同じ方法で行ったため本稿では説明を割愛する)。インプラント体と骨とのインテグレーション後には、プロビジョナルレストレーションを装着し、それをアンカレッジに活用して歯の排列を完成させた。インプラント上部のプロビジョナルレストレーションにリンガルボタンを設置し、残存歯をエラストメトリックチェーンで継続的に弱い力で牽引することで、歯の移動補助とした。筆者はショートスパンのライトフォースのものを多用する。強い力で牽引しすぎると、アライナーの素材の靱性を超えて歯が傾斜してしまうことがあるので小さな力で十分と認識している。 歯が最終位置に移動した後に、前歯部の固定式ブリッジとインプラントの最終的な上部構造の製作を行った。この症例で活用した方法を用いると、埋入したインプラントを活用して天然歯の位置を厳密にコントロールすることができ、1ステップずつの歯の移動を制御しやすいアライナー矯正との相性が良いが、この内容に加えて、歯の移動後の最終位置の矯正のシミュレーションに、インプラントの上部構造の歯冠シ for OrthodonticsCASE PRESENTATION-Digital 図1a〜f 初診時。この症例のように臼歯部の咬合が崩壊し、前歯のカップリングも悪くアンテリアガイダンスが取れていない症例では、矯正歯科治療によるアンテリアガイダンスの獲得と、臼歯部へのバーティカルストップの獲得の両方を達成したい。
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