Technology 術前矯正にアライナーを用いる補綴修復治療の実際の臨床例を示す。まずは、インビザライン・スマイルアーキテクト™のリリース以前にどのようにこの種の症例に取り組んでいたかを例示したい。 図1で示すように、大臼歯部のバーティカルストップが失われており、かつアンテリアカップリングが不正の症例は実際の臨床では多いと思う。このような症例では、臼歯部には強固なバーティカルストップを作り出し、かつアンテリアカップリングを適正化して下顎の側方・前方運動時に臼歯部の離開を実現できる(側方運動時には特に平衡側干渉を起こさない)ような歯列と咬合の獲得を目指したい。治療順序としては、前方歯群の位置の適正化のために補綴前矯正を行い、臼歯部にはインプラントを設置し、最後に残存歯とインプラント部の補綴を行うこととなる。 歯牙移動とインプラント補綴を行う場合、移動した後の残存歯の位置に対して適切なインプラント位置を決定するためには、大きく分けると、①歯牙移動完了後にインプラント位置を診査する、② 歯牙移動後の歯牙位置を予測して、それを見越した位置にインプラントを先に埋入する、のどちらかの方法を選択することが多い。 大臼歯を複数失っているケースにおいては、前方歯群の移動のためのアンカレッジが不足するため、矯正用アンカースクリューやテンポラリーインプラントを Orthodontics231 2023年にアライン・テクノロジーよりインビザライン・スマイルアーキテクト™がリリースされ、歯列矯正を開始する前に、術前矯正のデジタルセットアップと矯正後の補綴修復物のデザインを同画面でコンピューターシミュレーションすることが可能になった。これにより、理想的な補綴修復物の形態に応じた歯牙ポジションの検討や、補綴修復のワークフローに都合のよい歯の移動計画(ステージング)の考察を行いやすくなった。補綴前矯正にアライナーを用いる補綴修復治療の実際の臨床においては、インプラント補綴や歯周外科などの歯槽骨に対するアプローチで、骨と歯の関係性を考慮したいケースが多い。 インビザライン・スマイルアーキテクト™のリリースから1年半ほど経ち、歯の移動計画と補綴修復物のシミュレーションに加えてCBCTのDICOMデータを歯のSTLデータに同画面で統合できる機能が実装された。本稿では、その新機能の紹介とデジタルデータを活用したortho-restorative treatment(矯正歯科治療を組み合わせた補綴修復治療)の症例とこれからの展望について述べたい。植田憲太郎(歯科医師:HANA Intelligence歯科・矯正歯科)症例1:インビザライン・スマイルアーキテクト™のリリース前に行っていた治療例はじめに※本資料にて示される臨床情報および推奨される内容については、インビザライン® システムを使用する一歯科医師の立場における個人的な見解に基づくものであり、必ずしもアライン・テクノロジー社の正式な会社方針を正確に反映するものではありません。また、それらはあくまで一般的な情報提供にすぎず、本資料にて示される臨床情報および推奨される内容を実際に臨床応用されるか否かについては、あくまで担当医個々人の個人的裁量、判断、責任に委ねられるべきものです。インビザライン ・ジャパン合同会社 for PRESENTATION-Digital CASE デジタルデータ統合を活用したアライナー矯正歯科治療×補綴修復治療
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