49デジタル化が遅れている原因ではないかと考える。クラウンワークのように必要に迫られる状況ではないことから、高額な設備投資等、時間的・金銭的にコストがかかる可能性が高い方法を選択してまで無理にデジタル化する必要もないことが、デンチャー≠デジタルといった先入観が払拭されない原因のひとつではないだろうか。 また、精度の高い義歯を製作するためには、高度な技術・知識・経験が必要である。それらを習得するために、少なくとも数年から十数年は必要になってくる。しかし、若手歯科技工士がベテラン歯科技工士と同等の技術・知識・経験を習得する前に業界を去ってしまうことも珍しくない。歯科技工士の高齢化、離職、成り手の減少等の問題は、会社単位に留まらず、業界全体、ひいては国全体の問題として厚生労働省からも危惧されているのは周知の通りである(図1)。技術者の減少は補綴装置の納期に影響する。この状況が進むと、義歯を必要としている患者が、義歯のない状態で数ヵ月間過ごすなどという状況が当たり前になる恐れがある。 そこで、デジタル機器が技術・経験不足を補う可能性を探っていきたい。これが、製作効率・作業環境の改善、そして、若い世代の歯科技工士に技工の面白み+αを知ってもらう機会に繋がればと考える。 患者・歯科医師が求める適切な補綴装置の製作工程で、チェアサイドにて行われる検査・診断から印象採得、ラボサイドでの設計・加工、その後の口腔内セットといった一連の治療の流れに、部分的、もしくはすべてにおいて何かしらのデジタル機器を使用することが必須の時代になっている。そのなかで、日々さまざまな技術革新と検証が行われ、飛躍的に進化を遂げてきた。もはや、デジタルかアナログかといったことではなく、患者に対して高精度かつ効率的に補綴装置を製作して提供するために、デジタル機器を扱うテクニックや知識・情報は必要不可欠になってきている。 では、部門別にみるとどうか。ラボサイドでの一般的なクラウンワーク・デンチャーワークの2部門について考える。 クラウンワークにおいては、ジルコニアの登場により、デジタル機器の介入が必須になった。また、CAD/CAM冠の保険導入が追い風となり、インハウス・アウトソーシングの違いはあっても、必然的に補綴装置製作におけるデジタル化が促進された。 デンチャーワークにおいても、近年では3Dプリンターが普及してきたことで、さまざまな工程にデジタル機器を使用できるようになってきた。しかし、前述のジルコニアなどのように、デジタルを介さなければ加工できないマテリアルではないこと、また保険収載の事情などから、あえてデジタル機器を使わなくても問題がないといった点が、デンチャーワークにおいて藤井 優/奥村亮太(歯科技工士:有限会社大津チタン)歯科技工士不足の問題、デジタル機器の導入はじめに株式会社アイキャスト PRESENTATION-CAD/CAMCASE キヤノン電子株式会社MD-500Wを使用してミリング加工にて製作した上下顎チタン床
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