9 1 プロローグライナーを作製するため(アウトソーシングアライナーの場合)、一度アライナー矯正治療を開始すると、車輪が坂道でなかなかとまれないように引き返すことが難しい。治療ゴールは事前のシミュレーションで想定し、治療の最終ステージまでのアアライナー矯正治療は、従来のマルチブラケットを用いた矯正歯科治療(以下ブラケット矯正治療)と比較し、口腔内装置の単純化、通院回数の低減化、治療前のシミュレーション作成および閲覧など、患者と歯科医師双方に多くのメリットがある。しかし、いったん治療が開始すると途中での方針変更が難しいため、治療前に細かい治療戦略を立案しておくことが望ましい。そのため担当医にはアライナー型矯正装置(以下アライナー)独自の歯の動き方を十分に理解し、難易度の分類やトラブルを予測する力が必要となる(図1-1)。そこで、筆者らはつねに症例を深く考え先手を打つことで、アライナー矯正治療中のさまざまな事象に対応できる想像力と創造力を身につけることを目的として本書を上梓した。CHAPTER2では多くの症例を供覧しながら、各症例でどのような背景をもとに治療計画を立案されたのか、そしてその治療結果についても余すことなく詳細に解説する。想像力と創造力が試される治療
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