症例選択第3章 再植90第3章 再植1.根管治療が失敗となる原因1)根管の複雑性 根管形態が複雑であるため、感染根管治療はすべてが成功するわけではない。側枝や根尖分岐、イスムスやフィンなど、ファイルが到達しない部位は多く、これらの部位で機械的に細菌が除去できなければ根管洗浄や貼薬による細菌の死滅は難しいのが現状である。さらに一度根管治療が行われている歯では、再根管治療の成功率は低下する。これは、初回の治療によりレッジやジップを形成されていたり、根尖孔が破壊されて開大していたりすると、ファイルを根管に接触させて機械的に切削することが困難なうえに、封鎖も難しくなるためである。意図的再植法で根尖部の切除や逆根管充塡を行うことで、これらの原因は排除可能となる。2)根管外の原因 根尖性歯周炎の原因が根管内のみに存在するとは限らず、根尖孔から歯根表面セメント質に細菌が増殖してバイオフィルムを形成することがある(図1)。このような症例では、根管内が十分に清掃できたとしても炎症は改善しない。また、根管から根尖部骨欠損内に感染した根管充塡材や仮封材、ファイルなどを押し出されている場合にも(図2)、根管内からこれらを除去することはきわめて困難で、炎症が改善しない。3)補綴的要因 感染根管治療を行うためにはポストを除去しなければならないが、長いポストが接着されている歯では、除去できないことがある。この場合には感染根管治療が行えないので、意図的再植法を検討することになる。ただし、抜歯時にポストが脱離したり歯根破折したりしないことが必須である。2.意図的再植法か歯根端切除術か1)意図的再植法の利点 根尖性歯周炎が感染根管治療で改善しない場合、菅谷 勉 Tsutomu SUGAYA北海道大学大学院歯学研究院 難治性歯内・歯周疾患治療学教室(寄附講座) 特任教授意図的再植法の適応症例1.どのような症例で適応すべきか いったん抜歯して元の抜歯窩に再植する意図的再植法は、口腔内では必要な処置ができないが、抜歯して口腔外に取り出すことで処置が可能となり、抜歯や再植時に歯根膜や骨の損傷がわずかで、術後に歯根と骨の結合が期待できる症例が適応となる。 具体的には根尖性歯周炎、垂直歯根破折、セメント質剝離破折、深い歯肉縁下う蝕などが該当する。意図的再植法にはリスクもあるので、利点と欠点、他の治療法の選択について十分に考慮して行うことが重要である。根尖性歯周炎の意図的再植法Q.17どのような症例で 意図的再植を行えばよいでしょうか。
元のページ ../index.html#10