2025年3月野亀慶訓刊行にあたって「Ⅱ級窩洞のCR充塡にはマトリックスが必要」これはCR修復の常識であり、現在まであらゆるタイプのマトリックスが登場してきた。しかし、「これがあればすべてのケースで対応可能」というマトリックスは存在せず、多くの歯科医師が複数のマトリックスを駆使して対応してるのが現状である。それなのに、新製品が出るたびに試しに買ってしまうのではないだろうか。院内に消耗品が増える一方で、つねにスタッフは在庫管理に追われる。ずっとサポートがあればよいが、たいていのものはそのうち新製品に置き換わり、その消耗品が手に入らなくなると買い替えを余儀なくされる。また、拡大視野下における治療が一般化してきたことで、マトリックスの完璧な適合の難しさ、それを伝って漏れ出たバリの処理、天然歯様の形態に賦形する困難さに気づいてしまい、辟易している歯科医師も多いのではないかと推察する。これらのことから、Ⅱ級窩洞からはインダイレクト修復を選択される歯科医師は多い。皆、知らず知らずのうちにマトリックスに支配されているのである。しかし、筆者は気づいてしまった。「Ⅱ級窩洞にマトリックスは必須ではない」ことに。筆者の開発した3D printer techniqueは、先生方をマトリックスの支配から解放し、フリーハンドで自由自在にⅡ級窩洞を攻略できるようにする可能性をもったテクニックである。治療環境の照明により、フローレジンを緩徐に硬めながら積み上げることで、さながら3Dプリンターのように立体造形するこのテクニックはⅡ級充塡はもちろん、アイデア次第では他にもさまざまな臨床シーンで役立つことだろう。本書はその全貌を包み隠ず公開しており、一読すればテクニックを始める足掛かりを必ず掴めるハウツー本となるよう、全精力を注いで書き上げた。
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