薬剤関連顎骨壊死
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MRONJの発症頻度抜歯によってMRONJが顕在化124.7人7など,AAOMS PP 2022の報告よりも1桁高い3.前述したとおり,日本版PP 2016が出された以降でも,日本口腔外科学会の疾患調査7によれば,全国のMRONJ新規患者数は右肩上がりに増加しているおける高用量と低用量,またBPとDmabの内訳は不明である.そこで,兵庫県での2018年から2020年の3年間のMRONJ新規患者数を調査したところ,1,021例が登録され,うち550例(53.9%)が低用量で,高用量を上回った.なお,低用量でのBPとDmabの内訳は,順に470例(85.5%),80例(14.5%)であった8筆者の推測値では,高用量で4%程度,低用量で0.2%程度の発症頻度である.高用量で骨吸収抑制薬(以下,ARA)を投与されている患者のほうが発症頻度は高いが,骨粗鬆症に対して低用量で投与されている患者の母数が圧倒的に多い(推測値:高用量15万例vs低用量300万例,約20倍)ため,副作用としてのMRONJの発症も決して稀ではないことを認識すべきであろう.抜歯を要する歯は感染を通常ともなっており,無策に抜歯を避けることは局所感染を放置することになり,感染が悪化(歯周炎が顎骨骨髄炎に,顎骨骨髄炎が顎骨壊死に)・拡大する可能性がある.ARAの使用がなくても,インプラント手術時などに骨を開削すると,術前の画像診断では把握しにくい抜歯後の骨の治癒不全に遭遇した経験をもつ歯科医師は多いだろう.ARAを使用中の患者の抜歯やインプラント埋(CHAPTER 3 表3参照).ただし,この年間新規発症に(CHAPTER 3 図2参照).薬剤関連顎骨壊死MRONJの発症頻度に関して,わが国は依然として増加傾向である(CHAPTER 3 表3参照)1.MRONJは,2003年にMarxによって報告2された当初,乳がんの骨転移や多発性骨髄腫の患者に使用されたビスホスホネート(以下,BP)注射薬(パミドロン酸やゾレドロン酸)によるものが大部分で,骨粗鬆症に使用されるBP経口薬(=低用量)によるものはきわめて稀と考えられていた.しかしながら,わが国では大きく状況が異なり,患者数では低用量患者のほうが多い.日本版PP 2023では,わが国でのMRONJの発症頻度として,高用量BPで1.6~32.1%と報告されている3.一方,骨粗鬆症に対して低用量で使用する場合には,エチドロン酸を例外として,薬剤間(例:リセドロン酸vsアレンドロン酸)および投与経路(経口か注射か)での発症頻度の差は明らかではない4.米国での最新のポジションペーパー(以下,AAOMS PP 2022)5では低用量BPで0.02~0.05%とされているが,わが国では低用量BP,デノスマブ(以下,Dmab)の順に0.104%,0.133%6や,年間10万人あたり135.5人,抜歯後にMRONJが診断されることが多いとする報告自体はまちがいないが,抜歯後感染などの経過不良による発症は必ずしも多くはなく,抜歯前から顎骨骨髄炎があった,もしくは潜在していたMRONJが抜歯によって顕在化するケースが多いと考えられるようになった(図1).584-14-2MRONJの発症頻度は?MRONJの発症契機は?

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