ebdac1歯周病とは図1a〜e 健全な歯周組織(a)と歯周炎(b)に罹患した歯の模式図.歯の支持組織(歯槽骨・セメント質・歯根膜)が歯周炎に罹患した歯では,喪失している(a,b:参考文献1より引用改変).c:健康な歯肉,d:歯肉炎,e:歯周炎.▶健全な歯周組織と歯周炎歯槽骨)の損傷を招き,炎症が消退しても歯周組織Life)が低下する.近年では,高齢者の咀嚼機能の維になり,歯は付着を喪失していくことになる.そのうち歯の動揺や病的位置移動をきたすようになると,咀嚼機能が障害され始める.咀嚼機能のほか,審美性の低下や発音障害によって患者のQOL(Quality of 持が,全身健康状態を維持することにつながることが明らかとなっている.また,歯周炎による慢性微小炎症状態は,さまざまなサイトカインを誘導するため,2型糖尿病,慢性腎疾患,心血管障害などの全身疾患とのかかわりが指摘されている. 歯周組織を健全化して,それを生涯にわたり維持することは,単に歯科的に機能を維持するだけでなく,全身的な健康に寄与することが示されている.事実,厚生労働省は,国民の口腔管理が医療費削減に寄与することを理解して施策に反映させている.18CHAPTER1 歯周病総論 歯周病は,歯肉病変と歯周炎に分類され,非プラーク性歯肉炎を除いて口腔内の細菌によって引き起こされる慢性炎症性疾患である.炎症が遷延化すると歯肉炎から歯周炎へと進行する.歯肉炎と歯周炎の違いは,歯周組織に回復不能の侵襲が及んでいるか否かである.プラーク性歯肉炎は歯肉に限局した疾患であるので,炎症が消退すれば歯周組織は健全なまま維持されるため可逆的な疾患といえる.一方,歯周炎は歯周組織(歯肉・セメント質・歯根膜・は完全に回復することは望めない,不可逆的な疾患である.多くの場合,炎症の消退と再燃を繰り返すため,重症化は長い期間をかけて緩徐に進行する進行性疾患である(図1). 歯周炎が進行するに従って,歯槽骨の吸収が高度
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