口蓋粘膜上顎結節図1 口蓋と上顎結節部の軟組織の組織的な差。上顎結節は粘膜固有層が70%以上と大部分を占め、粘膜下組織は5%以下で質の高い結合組織を採取することができる。(文献2より引用・改変)粘膜固有層粘膜下組織51.08%25.75%72.79%4.89% まずは上顎結節部の結合組織の特徴を紹介したい。上顎結節部の軟組織は口蓋粘膜に比べて厚みがあり1、粘膜固有層が多く、粘膜下組織がほとんど存在しないというのが組織学的な大きな特徴である2(図1)。また、上顎結節から採取した結合組織は組成の違いと遺伝子レベルの差により、口蓋の組織に比べて吸収しにくく3、4、サイトケラチン形成力が高いことから角化組織を作る力が強く2、5、過形成の可能性4、6などが示されている。 さらに、上顎結節部からの結合組織採取は採取時の出血が少なく、採取後の痛みや腫れも少ないため合併症リスクが軽減できる7、8こともメリットである。 加えて、上顎結節からの結合組織は採取できる量の個人差が非常に大きく、第三大臼歯が存在するような症例では採取が難しい一方で、第二大臼歯を抜歯している症例や、抜歯矯正を行った症例であればボリュームのある結合組織を採取できることがあるというのも特徴だと考えている。 筆者はCTG(結合組織移植術)をする際には、誰からでも一定量採取可能という大きな特徴を持ち、自然観を保ちながらボリュームを増やすことのできる口蓋からの結合組織を第一選択としているものの、ボリュームをなるべく維持して場合によっては過形成することがより良好な結果となる歯槽頂や乳頭部分への移植、角化粘膜幅を増やしたい部位、術後の合併症リスクをなるべく減らしたい場合には、上顎結節からの結合組織を積極的に用いるようにしている。 ただし、上顎結節からの結合組織は非常に質がいいと インプラント周囲の硬・軟組織造成においては、自家組織や多くの代替材料の中から条件や特性を考慮してマテリアルを選択する必要があり、ゴールドスタンダードとされる自家組織においてもさまざまな採取部位や採取方法が存在する。 その中で、筆者は上顎結節という部位の特性に着目しており、インプラント治療に応用している。上顎結節からは結合組織、自家骨が採取できる。どちらも他の部位とは異なった特性をもっていて、日本人の場合採取できる症例は限られているものの、上顎結節の部位特異性はインプラント治療における硬・軟組織造成において、非常に効果的なオプションになりうると考えている。本稿では、それぞれの組織の特徴を文献的に考察するとともに症例を提示したい。40上顎結節部の結合組織の特徴はじめにシンポジウムⅡ2001年 広島大学歯学部卒業2008年 ますだ歯科医院開業ITI fellow、ICOI diplomate増田英人Hideto Masuda大阪府開業上顎結節の特性を利用したインプラント治療
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