口腔機能“実践”読本 口腔機能低下症&口腔機能発達不全症
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1小児の口腔機能発達不全症116 口腔機能は,他の身体的機能と同じように小児期に獲得し,成人期にその機能を維持し,高齢期には加齢にともない低下します(図1). しかし,小児期に正常な口腔機能が獲得できていない場合,成人期に適切な口腔機能を発揮できなくなり,高齢期には歯の喪失や加齢などが加わって,さらなる機能低下をきたすと想定されています.口腔機能発達不全については早期に対応することで軌道修正が容易とされています.一般歯科診療所にはさまざまな年齢層が受診しており,ぜひ小児の口腔機能にも目を向けていただきたいと思います. 本章では小児の口腔機能発達不全症について解説します.口腔機能発達不全症とは,食べる機能,話す機能,その他の口腔機能が十分に発達していないか,正常に機能獲得ができていない状態を指します.明らかな摂食機能障害の原因疾患はなく,口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要です.咀嚼や嚥下がうまくできない,構音の異常,口呼吸などの症状が認められますが,患者には自覚症状があまりない場合も多く,歯科で機能発達の遅れや誤った機能の獲得について発見し,早い段階で軌道修正を行うことが重要とされています. すでに口腔機能が確立している成人では,口腔機能の低下が生じた場合,回復のための訓練(リハビリテーション)を実施することで可及的に元の正常な口腔機能に復帰させることができます.このように成人の場合は機能回復するための目標がありますが,一方で小児期の口腔機能は機能の発達・獲得(ハビリテーション)の過程にあり,成長の段階において正常な状態も変化します.このため,成長の段階に応じて口腔機能の獲得遅延について判断し,正しい成長に導くための評価基準が示されています. 松村香織口腔機能発達不全症にかかわる必要性について

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