ガミースマイル
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症例にみるガミースマイルの診断と治療セファロ所見e-1e-2図5f セファロ分析では,SNA 83.2°,SNB 76.8°,ANB 6.4°と骨格性の2級であった.上顎前歯は舌側に傾斜し,切縁は上唇下縁より6mm下方に位置している.下顎前歯の歯軸は,IMPA 86.8°と正常範囲内である.FMAが30.3°フェイシャルタイプはメジオタイプである.Occ -SNU1 to SNIMPAFMIAU1toL1 OJOB83.276.86.483.866.530.336.0120.722.090.386.862.9146.95.65.4109第5章 口腔内で確認すべきことは,まずは不正咬合の有無である.不正咬合が要因となるガミースマイルは少なくないため,不正咬合の種類,程度,臼歯関係などを確認する.本症例の臼歯関係はアングルⅡ級,前歯部のディープバイトが認められる.上顎前歯部の舌側傾斜が顕著であり,咬合平面が二面性を呈しているためアングルⅡ級2類と診断される(!). 通常,アングルⅡ級2類の場合は上顎前歯の圧下 本症例の上顎前歯の形態をみるとスクエアタイプである.臨床的歯冠長が短い場合,次に示すようないくつかの原因が考えられる.・萌出不全・歯肉の腫脹・咬耗・本来の形態がスクエアタイプでガミースマイルは改善するが,上顎臼歯も下方(高位)にあると前歯部の圧下だけでは顕著な改善は得られず,臼歯部も含めた上顎歯列の圧下が必要となる.臼歯の垂直的な位置は,セファロを用いて診断する.臨床的歯冠形態と歯肉の状態も確認する.本症例の臨床的歯冠形態はスクエアタイプだが,歯肉の異常によるものではないため,もともとの形態がスクエアタイプだと思われる. これらの診断を適切に行うことで治療方針が確定する(▶︎第3章参照,45ページ).歯周ポケット診査,エックス線写真などにより,歯肉形態に惑わされることなく本来の歯冠形態を診断することが大切である.また,歯周外科処置の適応になった場合でも,歯の位置異常があれば,顕著な改善が認められない場合もあるため,その旨を術前に患者に伝えておくことが必要となる. 矯正歯科治療により歯の圧下を行った場合,とくに歯肉タイプが厚い場合は,圧下により歯冠が歯肉に埋まっていくことがあり,臨床的歯冠形態がスクエアタイプになることもある.歯肉タイプが厚い患者には,矯正治療後に歯肉切除を含め歯周外科処置が必要になる可能性があることを術前に説明しておく.SNASNBANBFacial angleY-axisFMASN-MPGonial angleOne Point!臨床的歯冠形態について

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