骨歯 診断をするうえでわかりやすくするために,前述の要因を発生部位によって軟組織(口唇,歯肉)と,硬組織(骨,歯)に分類し,系統図で表した(図12). 軟組織における要因は,口唇と歯肉によるものに分けられる.口唇では上唇の過挙上と薄い上唇が,歯肉では歯肉増殖がガミースマイルの要因となりうる.硬組織における要因は,骨と歯によるものに分けられる.骨では上顎骨の垂直成分の増加(下降)と上顎骨の垂直成分の増加(前突)が,歯では上顎前歯の過萌出,上顎前歯の叢生,萌出不全,短い歯冠長,咬耗による対処性の挺出が要因となりうる.これらを系統図にすることで,視覚的にガミースマイルの要因を識別することができる(図13). しかし,ここで重要なのは,前述のようにガミースマイルの要因は1症例につき1つではないということである.上顎骨の水平要素の成分の増加(前突)と歯肉増殖が併発している場合,あるいは上顎前歯の過萌出と上唇の過挙上が併発している場合など,1症例に複数の要因が絡み合うことが多い.そのため,1つの処置だけを行っても劇的には改善しないということが起こる. つまり,各要因における診査を滞りなく行うことが重要であり,関係する要因18図12 構成する要因を発生部位別に分類し,主な治療法を列記することで要因に対する対処が明確化される.図12ガミースマイルを構成する要因による分類と治療法●口腔前提縮小術●ボツリヌス製剤注入●ヒアルロン酸注入●炎症物質の除去●薬物投与の中止,薬剤の変更●歯肉切除,全身状態の改善●上顎歯列全体の圧下 (矯正治療,顎矯正外科手術)●上顎前歯の舌側移動 (矯正治療,顎矯正外科手術)●上顎前歯の圧下 (矯正治療,顎矯正外科手術)●叢生の改善●歯肉除去●クラウンレングスニング●クラウンレングスニング, 補綴治療,矯正歯科治療●上顎前歯の圧下,補綴治療軟組織硬組織1.上唇の過挙上2.薄い上唇3.歯肉増殖炎症性の増殖(肥厚)薬物による増殖遺伝的な疾患,全身的な状態による増殖4.上顎骨の垂直成分の増加(下降)5.上顎骨の水平成分の増加(前突)6.上顎前歯の過萌出7.上顎前歯の叢生上顎前歯の萌出不全8.受動的萌出不全9.能動的萌出不全10.短い歯冠長11.上顎前歯の咬耗による対処性の挺出主な治療法4.ガミースマイルの分類と系統図口唇歯肉
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