超音波を用いた痙縮治療アトラス_コピー
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+++25肩肘221125++++++序論 機能的自立のためには,「痙縮」と「痙縮がもたらす運動障害」をしっかり区別することが重要である. 障害のある痙縮や痙縮がもたらす運動障害(spastic move-ment disorder:SMD)には,機能制限を克服するための理学療法に加え,医学的な治療が必要である3.SMDの管理や予後を改善するために,特にその障害が強い場合は,理学療法に加え局所的な医学的介入に焦点をあてた研究がいくつか存在し,これらには筋内BoNT A注射,痙縮筋へのフェノール注射,関連する末梢神経の神経切離術が含まれる.適切な介入を適宜組み合わせ,さまざまな痙縮パターンに応じて選択されるべきである.したがって,日常臨床では,四肢の異なる体位(仰臥位,座位,歩行)における近位および遠位個々の痙縮位置を詳細に分析することから始めることが重要である. 続いて,痙縮部位のパターン分類を行っていく.正確な筋の選択は,適切なSMD管理のための局所治療介入の基礎であり必須である.上下肢の痙縮パターンの正確な分析と分類をすることで治療目標の設定とリハビリ治療の計画が容易になる.以上より,SMDの上下肢の主要な典型的な痙縮ポジションを紹介し,われわれの意見を述べていく.表2-1 肩の運動に関する肩甲帯筋の寄与度肩の筋肉挙上引き下げ(下制)前方移動棘上筋三角筋大胸筋肩甲下筋広背筋大円筋小円筋棘下筋僧帽筋前鋸筋小胸筋(+)神経を標的とする手技 ―上肢編神経支配外側胸筋神経.鎖骨頭はC5-C6.胸骨頭はC7-T1.内側胸筋神経はC8-T1.起始鎖骨付着部:鎖骨内側1/2の前面.胸骨付着部:胸骨の腹側表面,第6〜7肋骨の軟骨.腹部外腹斜筋の骨膜.腹部付着部:腹直腸鞘前膜.上肢の痙縮パターン 腕の痙縮は上肢の機能を麻痺させることが多く,患者の機能的な自立を損なう. 脳卒中後痙縮(PSS)の場合,そのほとんどが肘,手首,肩のすべて,またはその組み合わせがSMDに関与している4-7.脳卒中後の慢性期には,顕著な障害性痙縮が粗大運動ならびに精緻運動機能の両者とも影響を及ぼす(表2-1)4-7.肩甲帯の痙縮は上肢関節運動(受動的可動域)を制限し,運動機能検査で測定される能動的な運動や,それにともなう作業に障害を与える8-10. 以下の項では,Hefterの分類システムにもとづき,上肢の多様な痙縮運動パターンを説明する11.Hefter分類(ASPⅠ-Ⅴ) Hefterら1は脳卒中後の痙縮患者665名の上肢姿勢と痙縮パターンを分析した.コホート研究において94%に歩行,立位,座位時の腕の位置の典型的な5パターンを認めた(図2-3).屈曲伸展内旋外旋(+)(+)+(+)(+)++++(+)図2-3 腕の痙縮パターン分類(Hefterら)1.上肢痙縮パターン.注)5つの上肢痙縮パターンはすべて痙縮した手と指の位置(例えば,クローハンド(鷲手),痙縮性,屈曲性,手内在筋性,虫様筋性など)の組み合わせで決まる.作用大胸筋の下部と中部(腹筋と胸骨筋の付着部)が腕を内転・内旋させる.これに加えて,鎖骨筋の孤立した収縮が肩関節を前傾させる.停止上腕骨大結節頂部.注射手技胸鎖関節-肩鎖関節間距離の1/3,鎖骨下縁の直下(0.5〜2cm).学習のポイント内側胸筋神経の走行はバリエーションが多いため,本書では最初の胸筋神経ブロックや手技には,外側胸筋神経を推奨する.四肢の痙縮位前腕手くび内旋/内転屈曲回外屈曲内旋/内転屈曲回外伸展内旋/内転屈曲ニュートラルポジションニュートラルポジション内旋/内転屈曲回内屈曲内旋/後屈屈曲回内屈曲外側胸筋神経:大胸筋背側腹側水平断の解剖(1) 大胸筋(2) 小胸筋外側胸筋神経血管USの主要原則外側胸筋神経はバリエーションが少なく,一定した走行を示す.大胸筋の下縁に沿って存在し,胸肩峰動静脈の位置を確認することで容易に見つけることができる.5.3 外側胸筋神経:大胸筋大胸筋を標的とした外側胸筋神経.←スマホでcheck(音声なし・英文のみ)18741975指標としての水平断の解剖図・安全な注射のための精巧な図解・手技とその適応の解説動画・日常臨床に役立つ関連情報が一覧可能 Paul Winston博士は,ブリティッシュ・コロンビア大学理学療法・リハビリテーション科の臨床准教授である.またカナダ理学療法・リハビリテーション学会の元会長であり,Canadian Advances in Neuro-Orthopedics for Spasticity Consortium(CANOSC)の共同設立者である.Daniel Vincent博士はブリティッシュ・コロンビア大学の麻酔科医である.同大学の医師たちと痙縮患者に対するよりよい治療法を構築するため,ビクトリア末梢神経・痙縮クリニックを共同設立した.彼らは,最適な治療を選択するための超音波ガイド下診断的神経ブロック治療の革新者であり,痙縮に対する新しい治療である凍結神経融解術の第一人者でもある. 本アトラスは,痙縮患者の臨床的な予後を改善し,よりよいケアを提供したいと願うすべての人に必携の指南書である.診断的神経ブロックは,ボツリヌス神経毒素製剤からフェノールブロック,手術,新しい介入方法に至るまで,適切な筋肉を効率的に選択し,最適な治療を提供するための技術である.• 正確で明瞭かつ臨床志向  各章において,33人の国際的な著者と専門家が参加し,現在の痙縮の定義から,診断的神経ブロックの説明,外科的治療,化学的除神経,新しい介入方法における現在の概念まで,多くのトピックスについて解説している.• 精巧なイラスト─ユニークな教材デザイン  部位別に45種類の筋肉が,精巧なイラストで紹介されている.• 詳細な説明と写真が一覧可能  高画質な写真を用い,神経幹や神経枝の位置,筋肉の作用,注射部位,各筋肉やその筋肉群の注射プロトコルなどのさまざまテクニックが詳細に説明されている.• 動画によるデモ  二次元コードでスマートフォンと連動した約60本もの動画で,注射のテクニックや臨床例を見ることが可能.• 簡潔で要点をおさえた理想的なアトラス  臨床に即した技術をコンパクトにまとめ,的確に視覚化されている.見開きページ構成により,効率的なナビゲーションとなっており,スマートフォンから解説動画にも簡単にアクセスできるため,必要な情報に素早くたどりつける.超音波を用いた痙縮治療アトラスひとめでわかる注射手技・標的筋の神経支配,起始,穿刺方向・筋の作用や位置の描写・注射プロトコルと解剖学的位置関係の

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