図2 歯周-矯正治療の目的.図3 歯周-矯正治療の適応症と禁忌症.成人矯正と歯周病—歯周-矯正治療の原則医療面接(初診)歯周病検査歯周病診断治療計画立案歯周基本治療再評価検査歯周外科治療口腔機能回復治療再評価検査病状安定臨床家のための矯正YEARBOOK 20241.歯列不正が原因でプラークコントロールが困難となっている部位に関し,患者または術者が的確な口腔衛生管理を行いやすい環境を整え,長期の歯周組織の安定を図るために行う.2.歯列不正が原因で早期接触,咬頭干渉などの咬合異常で2次性咬合性外傷が生じている場合に,歯軸の改善を図り外傷性咬合を除去する.3.歯列不正が原因で垂直的または水平的食片圧入が生じている場合に,食片圧入の原因となる歯軸の傾斜や接触点の改善を図る.適応症1.歯周治療と矯正治療に関する理解が得られている.2.現段階の歯列の状態に応じたプラークコントロールが行われており,水準の維持が可能である.3.歯周治療により歯肉の炎症が消失または低く抑えられている.4.矯正力に対応できる量の歯周組織(歯槽骨など)が残存している.5.歯肉など軟組織喪失の危険性がない.6.目的とする矯正治療に必要な固定源が確保できる.4.歯周炎や外傷性咬合で破壊された歯槽骨形態の改善を促すため,隣在歯との歯槽骨吸収レベルが不整な場合,歯にアップライト,挺出,圧下などの適切な矯正力を加え,歯槽骨のレベリングを行う.5.歯周治療にともなう審美障害や発音障害の軽減.6.最終補綴の口腔機能回復治療において作製する義歯,ブリッジなどの永久固定装置の複雑化の回避や装着後の良好な予後の獲得.禁忌症1.歯周治療に関する理解が得られず,矯正治療を優先させる希望を持っている.2.プラークコントロールが不良であり,現状で改善の余地がある.3.歯肉に強度の炎症がある.4.歯周炎が重度で歯周組織の破壊が進み,歯槽骨の残存量が少なく,歯の動揺が著しい.5.高度な歯肉退縮を促進する危険性がある.6.目的とする矯正治療に必要な固定源が存在しない.(プラークコントロール,スケーリング・ルートプレーニング,習癖の修正,抜歯,咬合調整,う蝕治療,暫間固定,歯周治療用装置,禁煙支援など)歯周組織検査(再評価)治 癒メインテナンスサポーティブペリオ図4 歯周治療の流れ(参考文献1より引用改変).なお,進行予防の点線囲みは,保険診療に導入された新たな継続管理の考え方で,歯周病の進行を抑制するために行う.(修復・補綴治療,歯周-矯正治療,インプラント治療)ドンタルセラピー(SPT)歯周病重症化予防治療進行予防011て行われる歯周基本治療や歯周外科手術後の再評価後となる.よってその多くは炎症が消失した環境下で口腔機能の改善を図るために補綴(永久固定)や口腔インプラント治療などを行うステージである口腔機能回復治療の一環として行われる(図4). しかし,前述のように治療を円滑に進めるためにプラークコントロールのしやすい環境作りや外傷性咬合の除去を早期に行う必要性が求められる場合には,歯周基本治療のステージで炎症のコントロールを十分に行いながら,限られた範囲内での矯正治療(限局矯正または部分矯正)を行うことがある.この段階では,いわゆるプロビジョナルレストレーションや即時義歯などの歯周治療用装置との併用も視野に入れるが,炎症のコントロールが不十分であると矯正力が外傷力として作用する危険性があり,一般的な方法ではない. なお,歯周外科治療を含めた歯周治療後に矯正治療を開始した場合と,基本治療と平行して矯正治療を行い,その後に歯周外科治療を行った場合の臨
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