審美歯科の巨匠であり、世界一引用件数が多い論文を8①②Dual-Zoneとは、文字どおり「2つの領域」といもつコロンビア大学教授のDr. Tarnowとニューヨークで同じSDNY Dentalチームで補綴担当のニューヨーク大学教授Dr. Chuの力作である『The Single-Implant』の日本語版を上梓する運びとなったことは、このうえない喜びであります。日本語版を上梓するにあたり、私のメンターであるDr. Tarnowに直接、注意点などアドバイスをおうかがいしたところ“No one better”とのお言葉をいただき、より身の引き締まる思いでした。コロナ禍前までは、20年以上の長きにわたり少なくとも1年に1回はDr. Tarnowの講義をニューヨークあるいはその他の国で拝聴しており、つねづねDr. Tarnowの理論が教科書になったら良いのにと思っておりましたので、本書は満を持して上梓されたという感想です。皆さまが一度は耳にしたことがある思われる歯のコンタクトポイントと歯槽骨頂の距離が5mm以内であれば、ほぼ100%の確率で歯間乳頭ができるということをエビデンスにした1992年に発表された「The effect of the distance from the contact point to the crest of bone on the presence or absence of the interproximal dental papilla」が世界一引用件数の多い論文です。また、プラットフォームスイッチングインプラントの場合、インプラントとインプラントの距離がプラットフォームスイッチングではないインプラントが3mmであるのに対して、2mmでよいというエビデンスも検証されました。臨床において非常に有益で大事なエビデンスの数々を発表した天才であるといっても過言ではないと思います。本書においては、前歯部、特に抜歯即時インプラント埋入において、いかに審美的にインプラントを埋入し、長期的な成功を得るということが理解できる教科書になっております。キーワードは“Dual-Zone Socket Management”という言葉にあります。これはより審美的に、また、より天然のコンポーネントである、歯肉、骨、歯間乳頭を利用したエマージェンスプロファイルを美しく仕上げるためには、骨縁下の造成だけではなく、天然の組織の形状維持し、そしてより骨縁下の造成を確実にするために、骨縁上の歯肉の部分の造成も重要だという内容です。長期的な審美を獲得するためには生物学的幅径の原則が重要で、それを達成するためには“Dual-Zone Socket Management”が必要となります。詳しくは本書の内容をご覧ください。翻訳に際して、本書の価値を理解し、より多くの日本の歯科医師に有益な情報を与えたいという志のもと、日頃の忙しい日常をも犠牲にして、読者によりわかりやすいように努力して翻訳をしていただいた先生方にこの場をお借りして心より感謝を申し上げます。 本書を手にする先生方が増え、日本のインプラント治療のレベルがより上がることを祈念いたします。最後に、本書の日本語版の上梓に多大なるご支援ご指導をいただいたクインテッセンス出版株式会社の北峯康充代表取締役社長、山形篤史様、石原千晴様に心から御礼を申し上げます。2024年9月吉日日本大学客員教授 鈴木仙一骨縁上と骨縁下をあわせてう意味である。この領域の境目となるのが、右図の線上の骨縁である。領域の1つが骨縁下、もう1つが骨縁上である。 骨縁下に骨移植材料を充填する目的は、抜歯窩内にできたインプラントとのギャップを埋めるためである。 一方、骨縁上に骨移植材料を充填する目的は2つある。1つ目は骨縁下の骨造成を余分に行うこと(①)、2つ目は歯肉の形状を維持すること(②)である。たとえば、抜歯にともなう歯肉退縮およびダウングロースを、骨移植材料によるサポートで防ぐ役割がある。 この「Dual-Zone」という概念は、本書においてたいへん重要なコンセプトとなっている。Dual-Zoneとは?Dual-Zone骨縁下(Subcrestal)骨縁上(Supercrestal)監訳者序&Dual-Zone
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