図2 吸着のメカニズム。左:下顎安静時。適合の良い義歯は顎堤の上で唾液を介して停止し、密着状態になっている。中央:咬合時(嚥下時)。床縁全周が辺縁封鎖されている義歯に咬合力が加わると唾液が排出され、義歯内は陰圧になり吸着が完成する。右:吸着の維持。開口による可動粘膜の動きや側方運動によって義歯が浮き上がろうとしても吸着していれば義歯は外れない。右→左:咬合力が排除され、下顎が再び安静な状態になると内部の陰圧がゆっくりと解き放たれ、義歯は再び唾液上に停滞する。参考文献1. (公社)日本補綴歯科学会(編).歯科補綴学専門用語集 第6版.東京:医歯薬出版,2023.2. 永田一樹,柏倉直人.総義歯症例の難易度診断と製作フローチャートの活用.日本歯科評論.2019;79(6):127‐36.3. 阿部二郎(監著),岩城謙二,須藤哲也,小久保京子(著).下顎総義歯吸着テクニック ザ・プロフェッショナル.東京:クインテッセンス出版,2017.4. 阿部二郎.誰にでもできる下顎総義歯の吸着.東京:ヒョーロン・パブリッシャーズ,2004.2.下顎吸着義歯のために必要な下顎閉口機能印象とは?11 吸着のメカニズムを以下に示す。まず、顎堤に適合の良い義歯が密着する(図2左)。この状態で嚥下などの動作により咬合すると、顎堤粘膜と義歯の粘膜面の間にある唾液が外に排出され、義歯内面が陰圧になって吸着が生じる(図2中央)。この吸着状態になると、開口しても義歯は外れずに安定する(図2右)。しかし、一度吸着したらそのままずっと吸着し続けるわけではない。咬合力が解除されて下顎が安静な状態になると、内部の陰圧はゆっくりと解放され、義歯は再び唾液上に停滞する(図2左)。これを繰り返すことで吸着が維持される4。 このようなメカニズムで下顎総義歯の吸着は成り立っている。印象採得においても、閉口した状態で機能運動を行いながら採得することが重要である。吸着義歯の原理
元のページ ../index.html#2