改訂版 インプラント外科nolink
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 単独稙立であってもSSIリスク因子がある場合は,SSIリスク因子がある抜歯に準じるとよい.比較的小規模(1〜4歯欠損)の骨造成(自家骨移植,GBR)では,埋伏歯に準じるとよい.広範囲(5歯以上欠損)の骨造成(自家骨移植,GBR),あるいはSSIリスク因子がある骨造成では,抗菌薬投与期間をその程度に応じて3〜5日間とするのが妥当を考える. 以上の文献的考察と自験例からインプラント手術における予防抗菌薬投与を表7とした. 一般社団法人日本感染症学会と公益社団法人日本化学療法学会の「JAID/JSC感染症治療ガイドライン2019」5には,歯性感染症の抗菌化学療法のポイントとして,① 感染病巣である顎骨,膿瘍腔などの口腔組織への抗菌薬移行濃度が低いため,感染根管治療,膿瘍切開などの局所処置を併用することが重要である.また,嫌気性菌が関与する感染症では切開,排膿などの消炎処置を行い,菌量を減少させるとともに,嫌気環境を改善することがきわめて有用である② 主要原因菌である口腔連鎖球菌および嫌気性菌に強い抗菌力をもつ抗菌薬を選択する.炎症の重篤化にともない偏性嫌気性菌の関与する割合が高くなる.重症の歯性感染症ではβ-ラクタマーゼを産生する嫌気性菌に対して強い抗菌力をもつ薬剤を選択するの2点を挙げている.46感染性心内膜炎(IE:Infective Endocar-ditis)の予防投与 「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン 2017 改訂版(JCS2017)」4によると,歯科口腔外科領域:出血をともない,菌血症を誘発するすべての侵襲的な歯科処置(抜歯などの口腔外科手術・歯周外科手術・インプラント手術,スケーリング,感染根管処置など)は,予防的抗菌薬投与を行うことを強く推奨するとしている(表8).その理由は,歯科処置にともなう菌血症の発症率は,抜歯などではほぼ100%であり,歯石除去でも高率であるからである(表9).歯性感染症の分類1群:歯周組織炎2群:歯冠周囲炎(おもに埋伏智歯)3群:顎炎(ドレナージ必要)4群:顎骨周囲の蜂窩織炎(ドレナージ必要)原因微生物 口腔連鎖球菌7割+嫌気性菌3割. 嫌気性菌でもっとも分離頻度が高いPrevotella属(嫌気性菌は)はβ-ラクタマーゼを産生し,ペニシリン系および第3世代を含むセフェム系薬に耐性を示す.抗菌薬の選択 歯性感染症に対する抗菌薬効果判定の目安は3日とし,増悪の際は,外科的消炎処置の追加,他剤への変更を考慮する.米国歯周病学会では歯性感染症における各種抗菌薬の投与期間はおおむね8日間程度であると述べている6.改訂版 インプラント外科 動画で理解! 基本手技と自家骨移植のポイント歯性感染症における抗菌薬投与

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