ITI Treatment Guide Volume 14
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a図3a~c 抜歯後の吸収性変化は、インプラント埋入のタイミングとは無関係に起こり、抜歯即時インプラント埋入では防ぐことができない。ベースライン(a)、抜歯後4週(b)、12週(c)の画像では、画像右側の、抜歯即時埋入されたインプラントに近接する薄い唇側骨が吸収している。2章 抜歯即時インプラント埋入と即時荷重の進化 これらの因子はすべて変動する可能性があるものの、抜歯後の硬組織と軟組織の寸法的な変化を評価したシステマティックレビューでは、6ヵ月間の治癒期間の平均で幅3.8mm(29%~63%の範囲内)、高さ1.24mm(11%~22%の範囲内)の硬組織の減少が報告されている(Tanら、2012)。 以下のような吸収パターンがこれまでに報告されている:・高さよりも幅の吸収が大きい(Johnson、1969)・下顎骨は上顎骨よりも吸収が早い(Atwood、1971)・ 臼歯部は前歯部よりも吸収が少ない(PietrokovskiとMassler、・ 連続した複数の抜歯部位では、単独抜歯部位と比較して、より大きな垂直的変化が起こる(Lam、1960)・頬/唇側骨が最初に吸収される(CawoodとHowell、1988) 上顎前歯部に元々存在する薄い唇側壁は特に吸収しやすい。Araújoらは、唇側骨板の歯冠側部は歯周組織の一部である束状骨のみでできていることが多く、歯に依存した構造であるという仮説を立てた(Araújoら、2005)。抜歯を行うとこの骨は不要となるため、当然の結果として骨吸収が生じる。抜歯即時インプラント埋入を行った場合、抜歯窩の薄い唇側骨(1mm未満)は、厚い唇側骨(1mm以上)と比較して、歯軸方向に3倍以上骨吸収する可能性が高いことが示されている(Ferrusら、2010)。1967) また、穿孔や裂開などの損傷がある唇側骨では、骨が弱くなり、吸収しやすい傾向がある(Kanら、2007)。一方、唇側骨が厚い部位では、抜歯後の歯槽堤の寸法的な変化が少ない(Chappuisら、2013;Chappuisら、2015)。その他のリスクファクターとして、歯周組織のフェノタイプが薄いこと(EvansとChen、2008;Cordaroら、2009)や埋入時にインプラントを意図せず抜歯窩内唇側へ位置づけること(Chenら、2007;EvansとChen、2008)などがある。 抜歯直後の抜歯窩に埋入されたインプラントのオッセオインテグレーションは予知性が高く(Chenら、2004)、インプラント表面と抜歯窩壁間のギャップに関係なく起こることが証明されると、抜歯即時インプラント埋入にともなう抜歯窩治癒の生理学的プロセスの研究が進められた。当初、新しい治療概念としての抜歯即時インプラント埋入の支持者たちは、抜歯後の唇側骨吸収を抑制する可能性があり、歯を支持する役割のおかげで、審美的により良い結果をもたらすと主張してきた(Lazzara、1989;Denissenら、1993)。しかし、その後の研究で抜歯後の吸収はインプラント埋入のタイミングとは無関係に発生し、抜歯即時インプラント埋入ではそれを防ぐことができない、という相反した結果が報告されている(Botticelliら、2004;Araújoら、2005;Chenら、2007)(図3a~c)(Araújoら、2006)。ITI Treatment Guide Volume 14LBLBLbcB8

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